2011 Fiscal Year Annual Research Report
移住生活者の生活支援と移民政策における福祉課題の位置づけに関する日韓比較研究
Project/Area Number |
21330141
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
三本松 政之 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (10196339)
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Keywords | 多文化家族 / 結婚移住女性 / 外国人労働者 |
Research Abstract |
本研究では多文化社会化が進展する韓国におけるその実践的対応の把握を進めてきた。本年度は韓国の外国人労働者への政策と結婚移住者への政策との整合性という視点から調査を進め、外国人労働者の支援団体等への補充調査と、結婚移住女性支援の実態、実像の把握を課題に多文化家族支援センターを利用する移住女性への調査を実施した。外国人労働者も結婚移住女性も移住生活者であるが、その政策的位置づけは大きく異なり、前者は不足する労働力を補充するために一定期間滞在する存在とされ、さまざまな制約を受けている。一方、結婚移住女性は多文化家族を形成して国内にとどまる存在であり、社会統合の対象としてその支援が行われている。多文化家族支援は、実態的には韓国の移民政策の主要な柱の一つであり、法的な基盤に基づき全国の地域で展開されている。だが外国人住民の約4割は外国人労働者であり、約1割が結婚移住者である。ここに韓国の移民政策のねじれがみられる。 日本では外国人住民の定住化傾向が強まりつつあるなかで基礎自治体の一部において、かれらを移住生活者として捉えなおすこと、また社会統合の課題として支援に取り組むことが求められている。今年度はこの観点から、日系ブラジル人を中心とした外国人労働者の集住地域(本研究の先行研究での対象地、岐阜県)でのリーマンショック後の実態把握、また基礎自治体の範域を超えた支援策やシステムの構築に関わるメゾレベルでの研究を企図し、その対象地域に外国人登録者数が全国で5位(2010年12月末現在)で、多様な経緯の下での外国人住民の定住化が進展している埼玉県を選定した。その考察から同県では、画一的な支援ではなく、外国人集住の経緯と地域特性に応じた支援策の構築、ソーシャルワークに基づく支援の整備、行政内部や民間団体との協働の仕組みの構築、さらに社会的資源としての支援ネットワーク形成などが課題となっていることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、移住者の定住化への対応には基礎自治体の範域を超えた支援策の構築に関わるメゾレベルの研究視点が必要であることを前提として調査研究を進めているが、韓国の諸施策や外国人労働者支援団体、多文化家族支援センター等の実態の把握が進んでいる。また今年度はメゾレベルでの研究対象地域として埼玉県を位置づけられたこと、外国人住民の地域分散的多国籍集住地での調査から、その課題の多様性と支援の課題として地域特性に応じた支援を講じる必要性などが確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的な本研究の課題は、移民政策としての政策次元での包摂化の課題を明らかにすることにある。外国人移住者の定住化に伴い複合多問題化する生活課題把握へのアプローチの確立と、支援対応モデルの構築に向けた研究を進める。1、実際に政策的対応が進められている中での課題を明らかにするために、韓国での調査において実践事例の分析を進める。韓国では制度的な支援の対象とはならない非正規労働者(未登録労働者)への民間団体における支援について、そのミッションの位置づけなどの解明を含めて課題を探る。2、今年度の調査の成果を踏まえて、地域特性に応じた支援の構築にあたっての課題、ソーシャルワークに基づく支援、行政内部や民間諸団体との協働の仕組みの検討、社会的資源としての支援ネットワーク形成などについて埼玉県、神奈川県での調査を予定する。
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Research Products
(2 results)