2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際標準としてのICF-CY理念に基づく「個別の教育支援計画」実践モデルの構築
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21330212
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
片桐 和雄 Kanazawa University, 学校教育系, 教授 (00004119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 一義 金沢大学, 学校教育系, 教授 (90345645)
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Keywords | ICF理念 / 主体性尊重と発揮 / 生活機能モデル / 手段の目的化 / 教育目標の設定過程 |
Research Abstract |
各種障害別事例の教育支援にICF理念とモデルを適用して実践的検証を進めた.この過程で各事例の担任教師との連携体制強化(定例検討会)と,形成的評価資料蓄積のための授業分析情報管理システムを導入した.また,本研究の中間まとめとして,実践事例集「特別支援教育とICF-ICFは如何に障害児教育の課題を継承し,克服するのか(全80頁)」を刊行し(2009.3),広く意見交換を行った.今年度研究の成果と意義を以下に示す.(1)中間まとめ「事例集」による意見交換から,「ICF理念」が軽視された中で「生活機能モデル」による方法が重用される状況が明確となった.決定的な誤りは,対象者の思いやニーズとは無関係に支援内容や方法が支援者によって生活機能モデルを使い導き出され,実行されることである.これは『手段の目的化』であり,支援目標の欠如が最も重大な問題と分かった.ICF理念の中核をなす自己実現と自己決定等の「主体性の尊重と発揮」の元に生活機能モデルが使用されないことである.このことは障害児教育の歴史的発展過程における課題の継承・克服に関わる問題であり,この領域の教育にあらためて重要な提言を成す意義が明らかとなった.(2)事例の蓄積と遡及的分析から,障害児教育領域では従来から教育目標設定過程における対象者意思(ニーズ)の聴取尊重,重度重複障害では行動から意思の読み取りが重要とされてきたにもかかわらず,対象者への教育支援目標の設定過程で反映されていないことが明らかとなった.このことは,近年の権利思想の流れにおける「主体性尊重の重視」と支援の有り様との乖離を具体的に示すものであり,重要な問題提起となった.今後も個別事例の蓄積と分析を通して,特に目標設定過程で備えるべき要件とその手続きの解明に向けた取り組みを継続する.
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Research Products
(5 results)