2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340037
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田村 英男 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30022734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣川 真男 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70282788)
筧 知之 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (70231248)
中野 史彦 学習院大学, 理学部, 教授 (10291246)
藤家 雪朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (00238536)
岩塚 明 京都工芸繊維大学, 大学院・工芸科学研究科, 教授 (40184890)
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Keywords | スペクトル理論 / シュレディンガー作用素 / 磁場散乱 / レゾナンス / アハラノフ・ボーム効果 |
Research Abstract |
量子力学が研究対象とするミクロな世界では古典力学的な観点から説明できない注目すべき現象が生じる。このような現象は量子効果とよばれ、ひとつひとつが数学解析の格好の題材を提供している。本研究は、スペクトル理論において培われた漸近的手法を駆使し、量子力学に現れる量子効果の数理現象を追究する目的で行われた研究である。本年度の研究成果について報告する。代表者は、一つの障害物とコンパクトな台をもつ2つのポテンシャルからなる2次元散乱系においてレゾナンス問題を研究した。ただし、2つの台は互いに大きく離れ、障害物はその間に位置し、磁場を完全に遮蔽しているものとする。古典力学的な視点からみれば、障害物の外部領域を運動する粒子は磁場からの影響を受けないが、量子力学にしたがう粒子は、磁場を生成するベクトルポテンシャル(外部領域で必ずしも零とはならない)からの影響を受ける。この量子効果はアハラノフ・ボーム効果(AB効果)と呼ばれている。ポテンシャルの台の間の距離を離していくとき、2つのポテンシャルによって散乱され台の間で補足される軌道から複素平面の正の実軸近傍にレゾナンスが生成されることと、その位置に磁場の磁束が深く関与することを示し、磁場散乱のレゾナンス問題においてAB効果がどのように関わるかを初めて解明した。研究成果は2編の論文として纏め公表した。また、その結果の一端についても散乱理論研究集会の場で発表した。分担者も各自の関連する研究課題において一定の成果を達成した。例えば、覧は、対称空間上のシュレディンガー方程式の基本解の構成し、その台の構造を解析するとともに、その表現式に一般化されたガウス和が現れるころを示した。藤家は、必ずしも解析的でないポテンシャルによる散乱においてレゾナンス幅の準古典漸近展開を示した。その他の主な研究活動として、分担者が主催する次の研究集会の開催経費の一部として研究経費が使われた:夏の作用素論研究集会(岩塚主催(9月熊本)).姫路偏微分方程式研究集会(藤家他主催(2月姫路))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AB量子効果は、量子現象のなかでもっとも注目すべき量子効果のひとつであるが、数学的な側面からの解析はまだ十分になされていない。磁場散乱のレゾナンス問題におけるAB効果の数学的な研究成果は、本研究によって初めて為されたものであり、研究目的に挙げた課題のひとつが順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
磁場散乱のレゾナンス問題におけるAB効果の数理をさらに追求する。次の2点に重点をおく:(1)磁場を遮蔽する障害物を複数個に増やし(例えば2個に)、AB効果がレゾナンスの位置にどのように関わるかを解明する。複数個にすることによって現れる難しさは、障害物の間に生じる捕捉現象をいかに解析するかにある。その解析には、新しい手法(complex scaling method)を必要とする。(2)3次元への拡張を試みる。最も単純で重要な散乱系は、トーラス状のソレノイドに閉じ込められた磁場による系である。このような散乱系のレゾナンスにAB効果がどのように現れるか、数学サイドからの研究成果は皆無である。
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Research Products
(4 results)