2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体機能における時空間階層を繋ぐ選択性と統計性の動的構築原理の創出
Project/Area Number |
21340117
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 振風 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90397795)
寺本 央 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90463728)
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Keywords | 化学反応ダイナミクス / 法双曲的不変多様体 / カオス力学系 / 遷移状態 / 複雑ネットワーク / 一分子計測 |
Research Abstract |
1.熱揺らぎを考慮に入れた新しい化学反応ダイナミックス理論の開発 光化学反応の場合、環境の初期条件分布は当初の光励起によって作られるので、一般に熱平衡分布ではない。射影演算子の手法を用いて、通常の熱平衡に基づいたランジュバン方程式とは異なる非定常ランジュバン方程式を定式化することに成功した。通常のランジュバン方程式との違いは、平均力が時間の関数となること、摩擦核が過去の時刻と現在の時刻の両方に依存する(熱平衡の場合は時間差のみに依存)ことなどが明らかとなった。 2.高次ランクサドルを通過する相空間構造と化学反応動力学 一般に化学反応とは2つの谷の間に存在するランク1サドル(ポテンシャルエネルギー面上の峠)を通過するプロセスを指す。しかしながら、(たんぱく質など)実存する多自由度系は(局所的に)不安定方向を複数もつ高次ランクサドルが普遍的にもつ。高次ランクサドル領域の力学についての偶然と必然の原理を解明するため、2次ランクサドルを持つ散乱モデル系を用いて、標準形理論などの数値解析を実施した。その結果、遷移の可否を同定できる余次元1の多様体が共鳴の有無に関わらず比較的安定に存在することが示された。 3.1分子酵素反応における動態構造の解析方法による虚実 一分子観察を通して得られた概念のひとつであるDynamic Disorderを情報理論的な数学的基盤に基づいて解析した。計算機シミュレーションならびα-キモトリプシンの一分子観察データに対して、従来用いられるビニング・閾値解析法と情報理論に依拠する変化点解析を適用し、それらの結果を系統的に比較した。その結果、シグナル/ノイズ比が無視できない場合ならびにバックグランドノイズが一定でない場合は、従来法は誤った解釈を導く可能性が高いこと、dynamic disorderをもつとされていた.α-キモトリプシンにおいては、その存在は実は有意に認めらないことなどを新規に明らかにした。
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