2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21350008
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山田 千樫 電気通信大学, 名誉教授 (70037266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 信行 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 准教授 (50361837)
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Keywords | 多価イオン / 固体表面 / 放出電子 / スピン偏極電子 / GaAs |
Research Abstract |
本研究の目標は多価イオンを固体物質に照射したときに発生する2次電子をとらえ,そのエネルギー,収量などを定量的に決定し,照射する多価イオンの価数,元素番号,照射エネルギ憎,照射ターゲットとの関連を明らかにすることであった.今期終了に当たっては,残念ながら初期の目的を十分果たすことはできなかったが,放出電子のもう一つの特性であるスピン偏極度に注目した研究に歩を進めることとなったこのスピン偏極の観測は今までほとんど手がつけられていなかったが,これが解明されると多価イオンと固体表面との相互作用における新しい側面に迫ることができるだろう.たとえば磁性体表面ではスピンが整列しているがそこからの2次電子も整列したまま飛び出してくるのだろうか?,あるいは多価イオンのスピン多重度を決める手だてがえられないだろうか?,などの疑問に答えられればきわめて興味深い.そこで本年度(最終年度)の目標を昨年に引き続き偏極電子線源の完成およびそれ牽用いてのモット検出器の校正に設定した.多価イオン照射による放出電子のスピン解析を最終目標としていたが,残念ながらそこまでは至らなかった.しかしながら偏極電子線源の開発についてはすべてが整い,最終的に20-30%の偏極度をもつ電子線を10μA以上の強度で発生させる事に成功した.そのために,超高真空の達成10のマイナス8乗パスカル以上の真空,半導体レーザーと波長板による円偏光の発生,セシウム蒸気によるGaAs基板の活性化,電子光学系(偏向器,レンズ等),および偏光度の決定のための吸収電流法検出器の整備等の作業を完了した.あとはこの装置を既設のモット検出器とドッキングして,モット検出器の性能をチェックする事と,多価イオン照射された固体(特に磁性体)からの放出電子のスピン偏極度の測定へとつなげていきたい.
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