2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子生命化学を指向した水中で機能する金属錯体の合成
Project/Area Number |
21350037
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小寺 政人 Doshisha University, 理工学部, 教授 (00183806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
人見 穣 同志社大学, 理工学部, 准教授 (20335186)
船引 卓三 同志社大学, 理工学部, RCAST研究員 (70026061)
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Keywords | メタンモノオキシゲナーゼ / カルボキシラトリッチな配位環境 / 酸素活性化 / 水中で安定な二核鉄錯体 / パーオキソ二核鉄錯体 / エポキシ化 / カルボキシラト基の効果 / 酸素活性化における酸の効果 |
Research Abstract |
可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)は、活性中心に二つの鉄イオンをもつ非ヘム二核鉄酵素である。1つの鉄イオンに対してGlu残基のカルボキシラト酸素が2つ、His残基のイミダゾール窒素が1つ配位して、2つの鉄イオンはオキソ酸素またはヒドロキソ酸素によって架橋されている。この様にカルボキシラトリッチな配位環境をもつ事は水中で機能する期核鉄錯体の観点からも重要である。しかし、カルボキシラト基の効果やパーオキソ中間体から活性種が生じる酸素活性化機構については未解明である。我々は既に、2つのtpa配位子を-CH_2CH_<2->基で繋いだ6-hpa配位子の二核鉄錯体が溶液中で二核構造を安定化する事を報告した。そこで本研究では、カルボキシ基を導入した新規二核化配位子DPGlyを合成し、その二核鉄錯体とH_2O_2との反応による酸素活性化と基質酸素化を検討した。DPGlyを水溶液中pH4でFe(OTf)_2と酸素下で反応させて、目的とするμ-oxodiaqua二核鉄(III)錯体[Fe_2(O)(H_2O)_2(DPGly)](OTf)_2(1)が得られた。錯体1のMeCN溶液に2eq.のEt_3Nを加え、-40℃で2eq.のH_2O_2を加えると溶液は暗緑色に変化し、550nm(ε:430M^<-1>cm^<-1>)に新たなバンドを示した。これは、μ-oxo-μ-peroxo二核鉄(III)錯体[Fe_2(O)(O_2)(DPGly)](2)の生成を示唆した。錯体1に1から2当量の酸を加えると、パーオキソ錯体のプロトン化により吸収の増大と長波長シフトが観測された。さらにO-O結合の切断による酸素活性化が起こったと示唆されるスペクトルが見いだされた。また、この酸素活性化条件においてアルケンを加えると高効率高選択的にエポキシドが生成した。錯体1は溶液中での二核構造を安定に維持でき、さらにカルボキシラト基を導入したsMMOモデル錯体としては初めて酸化反応を行う事の出来るものとして重要である。錯体1を用いる事によりsMMOのカルボキシラト基の効果についての詳細な検討を行う事が出来ると考えられる。
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