2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子生命化学を指向した水中で機能する金属錯体の合成
Project/Area Number |
21350037
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
小寺 政人 同志社大学, 理工学部, 教授 (00183806)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
人見 穣 同志社大学, 理工学部, 准教授 (20335186)
船引 卓三 同志社大学, 理工学部, RCAST研究員 (70026061)
|
Keywords | メタンモノオキシゲナーゼ / 電子効果 / 酸素活性化 / ニトロ化した6-hpa配位子 / パーオキソ二核鉄錯体 / エポキシ化 / ニトロ基の効果 / 酸素化力の向上 |
Research Abstract |
本研究では、6-hpaに電子求引基であるニトロ基を導入した新規二核化配位子6-hpa^<4-NO2>を合成し、その二核鉄(III)錯体[Fe_2(O)(H_2O)_2(6-hpa^<4-NO2>)](ClO_4)_4(1)を用いて、非ヘム二核鉄酵素の機能モデル錯体の開発を目指した。ニトロ基の導入により、Fe-Npy^<4-NO2>結合の結合距離が長くなり、無置換のピリジル基とFeと結合Fe-Npyの結合距離が長くなっている事が結晶構造から明らかになった。これはニトロ基により、鉄のルイス酸性が強くなり無置換のピリジル基が強く結合したためと考えられる。CVの結果から錯体1の酸化還元電位が大きく正側にシフトすることがわかった。これはニトロ基の電子吸引効果により錯体1の鉄イオンのルイス酸性が高くなり、鉄が還元されやすくなった事を示している。 錯体1に-40℃で、2当量のEt_3N存在下、H_2O_2を加えると、パーオキソ二核鉄(III)錯体が生成した。この変化を電子スペクトルにより追跡し、パーオキソ錯体の安定化とトリオキソ二核鉄(IV)錯体の不安定化が明らかになった。これは、鉄のルイス酸性の向上によって合理的に説明される。また、H_2O_2を用いたシクロオクテンの酸化反応において同条件下における錯体1はエポキシドの収率を大きく向上させる事がわかった。さらに、様々なアルケンを基質として用いて錯体1が触媒するH_2O_2を用いた酸化反応を行った。その結果、次の2つの事が明らかになった。1)アルケンのトリオキソ活性種による1電子酸化反応(アルケンのカチオンラジカル中間体の生成)はニトロ基の導入により加速される。2)鉄のルイス酸性の向上によってFe-O結合が強くなる事によって、カチオンラジカル中間体への酸素原子移動反応は減速される。これらの結果は、非ヘム二核鉄酵素による酸素活性化及び基質酸素化における配位原子の電子効果の理解に重要な知見を与えるものである。
|