2011 Fiscal Year Annual Research Report
東洋町・ヴェレンベルグにおける放射性廃棄物処分地決定プロセスの政治過程分析
Project/Area Number |
21360465
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀井 秀之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (10181520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松崎 俊作 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任研究員 (70456143)
中川 善典 高知工科大学, マネジメント学部, 講師 (90401140)
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Keywords | 放射性廃棄物 / 政治過程分析 / 態度形成 / 東洋町 / 原子力 |
Research Abstract |
(1)東洋町・ヴェレンベルグの事例分析に加え,フランス・ビュールや韓国・慶州市,扶安郡などの事例分析を通じて,放射性廃棄物処分施設受け入れに関わる住民の態度形成分析枠組みを構築し,社会心理学や政治心理学等における既存の類似モデルとの比較を通じて改良・検証することができた。 (2)同分析枠組みの「感情的判断」における重要な影響因子である「信頼」や「公正感」などに関わる制度として住民投票制度を,「理性的判断」における重要な影響因子「経済的便益」に関わる制度として電源三法交付金制度を取り上げて文献調査を実施した.さらに,住民投票制度については,住民投票が結果に大きな影響を与えた韓国の2事例(慶州市/群山市=受け入れ・扶安郡=拒否)の事例調査も実施した. (3)以上の結果に基づいて,東洋町とヴェレンベルグの事例について仮説的に解決策を検討した.その結果,(a)電源三法交付金制度は発電所等既設地域での地域社会と施設の良好な関係の維持・発展に一定の役割が認められる反面,施設の新設への効果ははっきりしないことが明らかとなった(「感情的判断」には効果がない).一方で,住民投票制度を処分政策に当初から織り込んでおくことは,住民の「信頼」や「公正感」を高め,「感情的判断」を乗り越える一助となる可能性が指摘された.(b)ヴェレンベルグの例では,住民投票(州民投票)を実施したにもかかわらず,「感情的判断」のステップを乗り越えることができなかった.韓国の2事例を比較したところ,たとえば住民投票の対象地域設定やタイミングの設定,実施主体,成立要件の有無,拘束力などの制度的要因が結果に影響を及ぼすことが示唆された.(c)いずれの事例でも根源的には,処分事業そのものの意義やプロセス設計について,国家政府が主導して広く社会全体での明確な合意を確保することが「信頼」を醸成する条件であることが示唆された.
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