2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21370002
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 雄一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40192471)
|
Keywords | 学習記憶 / 線虫C. elegans / 化学走性行動 / インスリン / カルシンテニン |
Research Abstract |
線虫の塩(NaCl)に対する化学走性において、線虫は塩と飢餓を同時に体験すると、塩を避けるようになるという学習を示す。これを塩走性学習という。インスリンシグナル伝達経路と膜貫通タンパク質CASY-1が塩走性学習に必須の働きをする。本年度の本研究ではこれらの機能について研究を進め以下の知見を得た。 1、インスリン/PI3K経路の機能 学習により神経の活動にどういう変化が出るかを調べた。線虫をPDMSチップに固定し、20mMのNaClを10分間流す前後で、NaClの濃度変化に対する神経の応答をカルシウムレポーターGCaMPを用いて、シナプス放出をSynapto-pHluorinを用いて調べた。この結果、NaClを受容するASER感覚神経の応答は学習により大きくなる一方、シナプス放出は小さくなることがわかった。これらいずれもインスリン経路の変異体では起こらないことから、インスリン経路の作用が両者を引き起こしていることがわかった。さらに、ASERから入力を受けるAIB介在神経の応答は学習により小さくなった。これが学習による行動変化の一因と思われる。 2、CASY-1の作用機序 哺乳類の記憶にも関わると示唆されている膜貫通蛋白質カルシンテニンの線虫ホモログCASY-1が塩走性学習に必須の働きをすることがわかっているが、その作用機序は不明であった。casy-1変異体の抑圧変異のスクリーニングを行ったところ、インスリン経路のdaf-18変異体が複数得られたため、casy-1とインスリン経路との関連が示唆された。ASER神経におけるインスリン受容体DAF-2の局在を調べてみたところ、DAF-2は神経の軸索に局在すること、casy-1変異体ではこの局在が失われることがわかった。さらに、この局在がキネシンに依存することと、CASY-1がこの輸送を仲介しているらしいことが明らかになった。
|
Research Products
(9 results)