2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボノボを中心とするヒト上科霊長類の筋骨格構造から読み解く環境適応
Project/Area Number |
21370110
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Research Institution | 財団法人日本モンキーセンター |
Principal Investigator |
清水 大輔 財団法人日本モンキーセンター, 研究員 (60432332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊倉 博雄 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00178063)
平崎 鋭矢 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (70252567)
菊池 泰弘 佐賀大学, 医学部, 助教 (70325596)
大石 元治 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (40549557)
江木 直子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80432334)
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Keywords | 類人猿 / ボノボ / 固有背筋 / 腕神経叢 / 腋下動脈 / 足底部 / 筋配置 / 筋の生理学的断面積 |
Research Abstract |
本研究計画ではこれまでほとんど解剖されたことのないボノボの解剖を行い、解剖学的な基礎データの収集・備蓄を行うことを主目的とする。 本年度は右側の前後肢の神経血管系の精密解剖を行った。腋窩動脈は腕神経叢を貫くことなく、常に腋窩動脈が腕神経叢の腹側に位置し、更に上腕部でも浅上腕動脈となっていた。ヒトの場合、腋窩動脈がC7とC8の間から背側に位置を変え、神経叢の腹側と背側の枝の中間に位置するようになることが多い。今回のボノボでは、その様な位置変化が認められず、ヒトにおけるデータとの比較から、外側胸動脈や下胸筋動脈などが腋窩動脈の本幹になった可能性が示唆される。ヒトにおいてもその様な例が見られることから、ヒトとヒト以外の類人猿における腕神経叢と腋窩動脈の相関関係の類似性が示された。 また、高解像度のCT四肢骨の内部構造を観察した。四肢長骨の軸部の断面係数は、骨の荷重耐性と相関すると考えられ、運動行動との関係が議論されてきた。緻密骨面積と極二次モーメントについて、大腿骨と上腕骨中軸部の比をとったところ、このボノボ標本の値は、先行研究でのコモン・チンパンジーの平均よりは高いが、その変異内に含まれ、ヒトよりは明らかに低く、ヒヒやオランウータンよりは明らかに高かった。海綿骨の骨梁の発達は荷重がかかる方向や強さと関係していることが知られている。霊長類の上腕骨骨頭と大腿骨骨頭の海綿骨を比べた場合、容積密度は常に大腿骨骨頭の方で高いが、その程度は種によって異なる。このボノボ標本では、大腿骨骨頭の値は霊長類の平均より高く、コモン・チンパンジーの範囲であるのに対し、上腕骨骨頭は霊長類の平均より低いという独特な特徴が見られた。この容積密度の差は骨梁数の増減ではなく、骨梁厚の変化に起因すると考えられる。これらの結果はボノボやチンパンジーが運動時の後肢への依存がヒトに比べ低く、他の霊長類に比べ高いことの現れである。
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Research Products
(19 results)