2010 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の生息場としてのマングローブ水域の機能と重要性の解明:野外実験的アプローチ
Project/Area Number |
21380121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 光彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50178810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 裕美 東海大学, 海洋研究所, 准教授 (30439682)
堀之内 正博 島根大学, 汽水域研究センター, 准教授 (30346374)
中村 洋平 高知大学, 大学院・総合人間自然科学研究科, 助教 (60530483)
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Keywords | 餌場 / 魚類 / 成長率 / マングローブ / 野外実験 |
Research Abstract |
マングローブ林が存在する水域には多くの魚類が生息し,重要な漁場のひとつとなっていると言われている。しかし,マングローブ水域になぜ多くの魚類が生息しているのか,また,マングローブ水域が魚類の隠れ家や餌場として実際にどの程度,機能しているのかということについては,まだまったく検証されていないのが現状である。そこで本研究では,マングローブ水域が魚類の餌場として重要かどうかを明らかにするため,沖縄県西表島の浦内川河口域にみられるマングローブ水域において,餌資源量と魚類の成長率との関係を調べる野外実験を行った。 マングローブのある場所(マングローブ林の縁)とない場所(隣接する砂地)に網ケージ(縦1m,横2m,高さ0.8m)をそれぞれ6個設置した。実験には食性の異なる4種(多毛類食魚のセダカクロサギ,デトリタス食魚のヒルギメナダ,底生甲殻類食魚のコトヒキとミナミヒメハゼ)の稚魚を用いた。各ケージに1種ずつ10個体を投入して,20日間放置した後に各個体の成長率を調べた。その結果,セダカクロサギとヒルギメナダにおいてはマングローブのある場所で成長率がやや高いことがわかった。その一方で,コトヒキとミナミヒメハゼにおいては成長率に差はほとんどみられなかった。また,ケージ周辺における餌の量を調べてみると,デトリタス,多毛類,カニ類の現存量はマングローブのある場所で多いことがわかった。 以上の結果より,マングローブ域には魚類の主要な餌が豊富に存在し,一部の魚種にとっては成長率がよいため,マングローブ域は重要な餌場として機能していることが示唆された。
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Research Products
(2 results)