2009 Fiscal Year Annual Research Report
治療用タンパク・siRNA発現の時空間制御のためのプラスミドデザインとデリバリー
Project/Area Number |
21390009
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高倉 喜信 Kyoto University, 薬学研究科, 教授 (30171432)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 元也 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40273437)
|
Keywords | 遺伝子治療 / RNA干渉 / 融合タンパク質 / プラスミドDNA / デリバリー |
Research Abstract |
癌の免疫療法において有効な抗腫瘍ワクチンを開発するためには、腫瘍抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を効率的に誘導する方法論の確立が重要である。しかしながら、ワクチンの形で生体に投与した抗原は、通常、抗原提示細胞(APC)上のMHCクラスII分子上に提示され、CTL誘導効率が低い。そこで本研究では、機能改変タンパク質およびDNAワクチンの両アプローチを基盤とした包括的抗腫瘍免疫治療システムの開発を試みた。最終年度である本年度は、heat shock protein 70 (Hsp70)を用い、癌細胞内に存在する癌関連抗原を細胞外に、さらにはAPCにデリバリーすることによる癌特異的免疫誘導の可能性について検討した。抗原との結合ドメインを有するHsp70に、細胞外への移行活性を付与するために、細胞膜透過ペプチドとして知られるヒトヘルペスウイルス由来タンパク質であるVP22のC末ペプチド(ΔVP22)を選択した。Hsp70-ΔVP22を発現するプラスミドを用いて細胞に遺伝子導入をしたところ、Hsp70が細胞質に広く分布したのに対し、Hsp70-ΔVP22は膜への局在が観察された。そこで、モデル抗原OVAを発現するマウス胸腺腫細胞株EG7を選択し、マウス皮下腫瘍に遺伝子導入したところ、Hsp70-ΔVP22発現プラスミド投与群では、腫瘍増殖の抑制ならびに担癌マウスの延命効果が認められた。投与マウスでは、EG7細胞及びその親株であるEL4細胞に対するCTL活性が認められたが、B16細胞に対してはCTL活性は認められず、癌細胞特異的抗腫瘍免疫が誘導されていることが示唆された。EL4に対するCTLは、EG7細胞からOVA以外のペプチドがAPCにデリバリーされ、抗原提示に至った結果と推察した。以上、本研究では、癌抗原を効率よくデリバリーし、抗原特異的免疫応答を誘導するシステムとして、Hsp70を基盤とした開発に取り組み、抗原-デリバリーシステム複合体の空間的制御を実現することで効率的な癌免疫治療が可能であることを見出した。
|