2011 Fiscal Year Annual Research Report
アラキドン酸代謝酵素遺伝子改変マウスを用いた環境化学物質の新奇毒性発現機構の解析
Project/Area Number |
21390036
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
原 俊太郎 昭和大学, 薬学部, 教授 (50222229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 良人 昭和大学, 薬学部, 准教授 (80266163)
桑田 浩 昭和大学, 薬学部, 講師 (80286864)
依田 恵美子 昭和大学, 薬学部, 助教 (60527183)
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Keywords | 環境化学物質 / プロスタグランジン / ホスホリパーゼA2 / アラキドン酸代謝 / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
本研究では、アラキドン酸代謝酵素遺伝子改変マウスを用い、環境化学物質の生体内標的としてアラキドン酸代謝酵素に注目するという、これまでの研究とは異なる視点で、環境化学物質の新たな毒性発現機構を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の点を明らかにした。 1.環境化学物質ダイオキシンの毒性発現におけるmPGES-1の関与:出産後1日目の母マウスにTCDDを経口投与し、産仔に経母乳曝露したところ、野生型マウスの新生仔では重篤な水腎症が発症したが、mPGES-1遺伝子欠損(KO)マウスの新生仔では発症しなかった。mPGES-1を介し産生されるPGE2がTCDDの毒性発現に深く関わることが明らかとなった。 2.化学発がんにおけるmPGES-1およびPGISの関与:化学発がん物質であるアゾキシメタンを、mPGES-1、PGISの単独KOマウスならびに両酵素の二重欠損(DKO)マウスに投与したところ、mPGES-1 KOマウスでは大腸化学発がんが抑制されるのに対し、PGIS KOマウスでは発がんが逆に促進されること、DKOマウスではその中間の表現型を示すことを見出した。環境化学物質による化学発がんにおいて、mPGES-1とPGISが逆の作用を示すことが明らかとなった。 3.sPLA2の生体内機能解析:sPLA2アイソザイムのうち、IID、III、VのKOマウスの表現型について検討を行い、それぞれの酵素が炎症応答の寛解、マスト細胞の分化、リポタンパク質を介した脂質代謝に深く関わることを見出した。 4.iPLA2の生体内機能解析:iPLA2γKOマウスの表現型についてさらに検討を行い、本酵素が脂肪細胞分化に関わることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境化学物質の標的となると考えられる各々のアラキドン酸代謝酵素の生体内機能・化学物質の標的としての機能については、それぞれの酵素の遺伝子改変マウスを用い、多くの知見を得ることができた。中でも、環境化学物質の毒性のうち特に重要な化学発がんとの関連については当初の計画以上に進展した。しかし、各酵素に対する化学物質の直接的な毒性については、未だ不明な点が多く、より詳細な検討が必要であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画以上に進展した各々のアラキドン酸代謝酵素の生体内機能解析ならびに各酵素の化学物質の標的としての解析は、今後も現状を維持し進めるとともに、各酵素の組換えタンパク質や過剰発現・ノックダウン細胞を用いた解析もより推し進めることとする。
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Research Products
(21 results)