2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肝薬物代謝能を制御するmicroRNA:個人差解明のための革新的基盤研究
Project/Area Number |
21390043
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中島 美紀 Kanazawa University, 薬学系, 准教授 (70266162)
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Keywords | microRNA / 転写後調節 / シトクロムP450 / CYP / 核内レセプター / HNF4α |
Research Abstract |
薬の効果や副作用の個人差は、薬物代謝酵素活性の個人差に起因することが多い。本研究では、薬物代謝能を制御する新たな因子としてmicroRNA (miRNA)に注目し、本年度は、薬物代謝酵素をグローバルに制御するmaster regulatorであるヒトhepatocyte nuclear factor 4α(HNF4α)および薬理学的および毒性学的に極めて重要なシトクロムP450分子種の1つであるヒトCYP2E1がmiRNAによって制御されている可能性を検討した。 ルシフェラーゼアッセイなどの検討により、ヒトHNF4αの発現がmiR-24とmiR-34aの2種類のmiRNAにより制御されていることを明らかにした。興味深いことに、miR-34aは3'-非翻訳領域(3'-UTR)に結合して翻訳を抑制し、一方、miR-24は翻訳領域に結合してmRNAの低下を招く、という異なるメカニズムより、HNF4αタンパク質発現量を負に制御していることが示された。これらのmiRNAによるHNF4αの発現抑制は、胆汁酸合成酵素CYP7A1や糖新生酵素PEPCKの発現量にも影響を与えることが明らかになり、薬物代謝のみならず生理学的にも重要な意味を持つことが示唆された(Takagi, Nakajima et al.,J.Biol.Chem.,285 : 4415-4422, 2010)。 次に、ヒトCYP2E1 mRNAの3'-UTRにmiR-378が結合し、発現制御に機能的に働いていることをルシフェラーゼアッセイにより明らかにした。3'-UTRを含むCYP2E1安定発現HEK293細胞にmiR-378を過剰発現させると、CYP2E1タンパク質発現量は顕著に低下したが、CYP2E1 mRNAの安定性には影響しなかったことから、翻訳抑制により発現が制御されていることが示された。25検体のヒト肝サンプルにおけるmiR-378発現量は、CYP2E1タンパク質発現量およびCYP2E1翻訳効率と有意な逆相関を示したことから、miR-378による翻訳抑制がヒト肝におけるCYP2E1の常在的な発現量に影響を及ぼしていることを明らかにした(Mohri, Nakajima et al., Biochem. Pharmacol., 79 : 1045-1052, 2010)。
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Research Products
(5 results)