2009 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症脆弱因子としてのPACAP遺伝子の分子基盤解析
Project/Area Number |
21390069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 明道 大阪大学, 名誉教授 (70107100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 均 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (30240849)
新谷 紀人 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (10335367)
早田 敦子 大阪大学, 医学研究科, 特任助教 (70390812)
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Keywords | 統合失調症 / 神経ペプチドPACAP / 遺伝子改変マウス / 精神疾患・障害 |
Research Abstract |
本研究は、これまでに明らかにしてきた統合失調症脆弱因子としてのPACAPの分子基盤を確立することを目的として計画・実施し、平成21年度は以下の成果を得た。 1)幼若期の豊かな環境飼育によりPACAP欠損マウス(PACAP-KO)の精神異常行動が改善されたが、感覚情報処理機機能障害は、改善効果を示さなかった。この改善効果のうち、学習・記憶障害に対する改善は、2週間の持続作用が確認できた。海馬におけるBDNFは、豊かな環境飼育により両遺伝型とも発現上昇を示したが、新生神経細胞の生存数では、PACAP-KOマウスで減少していた。 2)マウス海馬由来神経培養細胞を用いて、PACAPにより神経細胞の突起の伸展、数の増加を確認した。 3)交雑形式が仔マウスの表現型に影響を及ぼす可能性が見出されたため、期間の延長を行い、追加実験を実施した。その結果、母親マウスの遺伝子型の違いにより、仔マウスの行動量に差が認められることを確認した。遺伝子型に依存せずに、外部要因によってその行動に変化が生じることを示唆しており、遺伝子/環境相互作用を反映した興味深い結果である。この変化は、仔マウスを野生型継母マウスに養育させたところ、改善効果が示されなかったため、胎児期の母胎内暴露や母親由来のエピジェネティクスな変化が考えられる。引き続き検討を行う。 4)定常状態では異常を示さないPACAPヘテロマウスにDOIによる5HT-2入力を行った結果、幻覚作用の増強や感覚情報処理機能障害を引き起こすことが認められた。これは、遺伝的素因だけでは発症せず外部の要因がさらに加わることで発症するという精神疾患の発症仮説にも合致した結果である。
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