Research Abstract |
平成21年度の研究目的は,わが国の臨床現場(病院)で考えられている"連携の概念"と"具体的日常行動における思考過程"について各専門職別に明らかにすることである。そのための全国調査(大規模調査)と英国における調査(小規模調査)との比較から双方における違いと共通点について分析することを主眼に調査を実施した。全国の総合病院300施設を対象に各専門職(医師×診療科数,看護師×診療科数,放射線技師,薬剤師,臨床検査技師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,医療ソーシャルワーカー,歯科医,歯科衛生士,介護福祉士,栄養士など)3,000部門に「他専門職との連携と協働」に関するアンケートを実施した。次に英国の総合病院において,日本と同様の調査を実施する(小規模調査)。対象は,University of SouthamptonのNHS総合病院で,現職者研修におけるファシリテータも常在する施設である。アンケート内容は,「他の専門性についての認識」「連携の概念」「スムーズな連携の阻害要因」「連携の自己評価」「連携のための改善点」など5つのカテゴリーから構成されるリカート式尺度の65項目で構成されている。アンケートの結果,大規模調査では,1,251件の回答が寄せられ(有効回答回収率41.7%),小規模調査では,47件の回答が寄せられた(有効回答回収率9.4%)。大規模調査では,薬剤師に対する重要性と,その連携に関する問題意識が高く,同様に臨床心理士,介護福祉士に対する関心と連携での問題意識を抱えている職種の多さを示した。それとは逆に,リハビリテーション関連職種では,概ねその重要さは意識されていたが連携課題についてはあまり問題視されていなかった。これらの点について,英国の小規模調査結果とは逆の傾向が示された。双方の分析から,わが国における専門職の連携概念と日常業務における連携協働への思考特性の一端が明らかとなった。
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