2011 Fiscal Year Annual Research Report
多環芳香族炭化水素化合物のAh受容体を介した発達神経毒性メカニズムの解明
Project/Area Number |
21390186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠山 千春 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10150872)
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Keywords | 発達神経毒性 / 芳香族炭化水素 / 行動毒性 / マウス / リスク評価 |
Research Abstract |
非意図的な生成物である多環芳香族炭化水素(PAHs)は環境中に蓄積し、ヒトは食品、大気・水、及び喫煙を介して体内に取り込んでいる。本研究では、妊娠期のPAHsへの曝露が、成長後の仔の学習・情動機能に及ぼす影響とその毒性発現メカニズムを、マウスを用いたin vivo行動試験と、マウス脳の特定領域における遺伝子発現解析により解明することを目的とした。代表例として2,3,7,8-四塩素化ジベンゾパラジオキシン(TCDD)の周産期曝露モデルを用い、周産期TCDD曝露によって惹起される行動異常がPAHsの受容体として知られるAh受容体(AhR)を介して起こるのか、そしてその曝露影響を行動レベルから組織・分子レベルで調べた。ダイオキシン曝露による発達神経毒性影響は、学習機能と情動機能の両面に顕れること、低用量域での、用量依存性を伴わない神経毒性があることを明らかにした。行動試験終了時に脳組織を回収し、刺激応答性遺伝子産物の免疫組織化学的検討を行った結果、低用量域での行動異常に伴い、前頭葉の神経活動が低下していたことを示唆する知見を得た。次に、ダイオキシンによるAhR依存的/非依存的神経毒性影響の検証を行うため、ダイオキシン曝露動物の作成を行い、解析を行った。すなわちAhR遺伝子欠損マウス系統の母動物(ヘテロ動物)にTCDDを単回経口投与することで、経胎盤・経母乳でTCDD曝露をうけたAhR遺伝子野生型マウス、欠損型、ヘテロ型マウスを作成し検証を行った。その結果、AhR遺伝子欠損マウスでは、ダイオキシンに曝露しない場合でも行動異常があらわれること、すなわちAhR受容体そのものが行動異常の責任分子である可能性が示唆された。前頭葉依存性の脳機能とAhR受容体との関係について、今後さらに研究を進める必要があることが強く示された。
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