2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21390222
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
楽木 宏実 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20252679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 修 熊本大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (00372615)
福尾 恵介 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (40156758)
大石 充 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (50335345)
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Keywords | 老化 / 動脈硬化 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
Apoptogenic Protein(Apop)は動脈硬化特異的に発現している遺伝子としてマウス動脈硬化巣からクローニングされた。ミトコンドリア蛋白質であり膜貫通ドメインを持たないため、ミトコンドリアのマトリクススペースに存在すると考えられている。ミトコンドリアは細胞のエネルギー産生器官であるとともに最大の酸化ストレス産生器官でもある。またアポトーシス誘導器官でもあり、細胞の代謝から細胞死まで幅広く関わる細胞内器官である。ミトコンドリアの多彩な機能のなかでApopはエネルギー代謝に関わる重要な因子であると考えられる。FACSを用いて酸化ストレス産生を定量した結果、siRNAでApop発現を抑制した血管内皮細胞で酸化ストレス産生が増加していた。同様に高グルコース条件下で培養した血管内皮細胞でも酸化ストレス産生は増加していたが、Apop抑制は高グルコースによる酸化ストレス産生増加に対してさらに増加させることはなかった。これらの結果Apop発現抑制が高グルコースによる酸化ストレス産生を模倣していることを示唆している。またApop抑制した血管内皮細胞は高血糖状態の内皮細胞と同様にATP産生が上昇し、ミトコンドリアの形態変化が生じていた。高血糖状態においてはミトコンドリアの代謝が上昇してATP産生が上昇する一方で、電子伝達系で電子の流れが阻害されて活性酸素種(酸化ストレス)産生が亢進する。またApop発現を抑制した細胞では老化が亢進し、老化関連ベータガラクトシダーゼ発現が亢進する。これらの結果はApop遺伝子の発現が糖尿病における血管内細胞の傷害と動脈硬化形成において重要な役割を持ち、糖尿病性血管障害防止の標的になることを示す結果である。血管細胞の老化は動脈硬化、癌を始め多くの疾患に関係しており、Apop発現がこれらの疾患治療の標的としても重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Apoptogenic Protein(Apop)が細胞老化に関わっていることを明らかにできた。またApop発現が細胞老化に関わる機構としてミトコンドリアの酸化ストレス産生が関係していることを明確にした。これらの結果からApop発現が多くの疾患の発症にとって重要であり、治療の標的になりうることを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においてApoptogenic Protein(Apop)と老化の関わりをさらに明らかにしていく。ミトコンドリアからの酸化ストレス産生は代謝の亢進に関連していると思われる。Apop発現抑制は酸化ストレス産生を上昇させるため、ミトコンドリア代謝が亢進しているものと思われる。今後の研究においてはApopが酸化ストレスに関与するメカニズムを明らかにしていくとともに、Apop発現を増減させる薬剤の研究を行っていく予定である。またマウスを用いた研究によって、心筋梗塞における心筋虚血状態でApop発現が心筋細胞死に関わっていることを明らかにしていく予定である。
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Research Products
(47 results)