2011 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症の病態生理におけるカンナビノイドの重要性についての研究
Project/Area Number |
21390332
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
橋本 隆紀 金沢大学, 医学系, 准教授 (40249959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 重誠 金沢大学, 附属病院, 講師 (00323006)
山田 和男 理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 副チームリーダー (10322695)
吉原 亨 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (00401935)
西内 巧 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (20334790)
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Keywords | Tetrahydrocannabinol / KCNS3 / サル / 死後脳 |
Research Abstract |
本年度は、思春期後期における内在性カンナビノイド受容体CB1への過剰な刺戟が、統合失調症における前頭前野神経回路の変化をもたらすメカニズムを調べるために、マリファナの主成分である Tetrahydrocannabino1(THC)(n=7)あるいはプラセボ(n=7)を思春期後期に毎日一回52週間に渡って静脈注射を続け30日後に安楽死させたサルの前頭前野組織を用い、内在性カンナビノイドによる調節をうける事が知られ、さらに統合失調症で変化の認められるパルブアルブミン陽性介在ニューロンに選択的に発現していることを我々が見出したKCNS3(Kv9.3)カリウムチャンネルサブユニットの発現を調べた。その上で、性別、年齢、死後経過時間、脳内pH、脳組織のRNA integrity indexなど死後脳におけるmRNAの状態に影響を及ぼす因子がマッチした非患者及び患者の対22ペアからの死後脳組織を用い、統合失調症の前頭前野におけるKCNS3 mRNAの発現を定量した。 その結果、THCの注射により思春期後期に内在性カンナビノイド受容体CB1への過剰に刺戟を受けたサルの前頭前野では、プラセボ投与を受けたサルに比べKCNS3mRNAの発現レベルが11%低下しており、統計学的に有意差(t6=2.5,P<0.05)を認めた。また、前頭前野におけるKCNS3mRNAの発現レベルは、統合失調症患者にて、非患者にくらべ、23%減少しており、統計学的に有意差(Fl,21=9.6,P<0.01)が存在した。一方、統合失調症患者に認められる様々な副次的因子(性別、失調感情障害の診断、物質乱用や依存の合併、薬物による治療、死因としての自殺)によるKCNS 3mRNAの発現への有意な影響は認めなかった。 これは、思春期後期における内在性カンナビノイドシグナルの過剰が、KCNS3の発現を低下させることで、パルブアルブミン陽性介在ニューロンの機能変化をもたらし、統合失調症における認知機能障害に寄与する可能性をしめす意義のあるものである。
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Research Products
(3 results)