Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 仁 札幌医科大学, 医療人育成センター, 教授 (70226702)
松山 清治 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (40209664)
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (30301401)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40381256)
加藤 忠史 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30214381)
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Research Abstract |
本研究は,胎児性アルコール症候群(FASD)モデル動物を作成し,経静脈的神経幹細胞移植を行なった際の脳諸領域の神経回路障害の変化と個体の認知・行動異常変異を解析し,神経発達障害の衝動性・社会認知異常に対する新たな治療法としての細胞移植療法の可能性について検討を進めることを目的としている。本年度は,(1)コントロール群,および作成した病態モデル群の一部には,蛍光・RI二重標識神経幹細胞を経静脈的に移植した。細胞移植による行動障害の変化について,認知・記憶,および社会コミュニケーションの機能等についての行動薬理学的解析を実施した。また,(2)移植細胞の脳移行,既存脳内神経ネットワークへの組み込みについて,脳諸領域の組織切片を用いた免疫化学的解析を実施した。新奇物体探索性試験において,コントロール群ではサンプルオブジェクトよりも新奇オブジェクトの探索時間が有意に長かったが,FASDモデル群においては差がなかった。 一方,細胞移植を行った群では,コントロール群同様,新奇オブジェクトの探索時間が有意に長く認知・記憶の障害が抑制されていた。社会相互作用試験においては,コントロール群に対し,FASDモデル群は同じ空間に新たに入れた同種のラットに対する接触の試みが乏しい一方,細胞を移植した群では,新たに現れた他ラットに対する接触性が有意に増加し,社会性・コミュニケーション等の障害が改善したことが考えられた。また,経静脈的に移植した神経幹細胞は,側脳室周囲,および前部帯状回,海馬,扁桃体を含む,脳の複数の領域で神経系の細胞に分化・成熟していることが観察された。加えて,移植細胞の一部は,扁桃体において,GAD陽性のGABAergicニューロンとして分化・成熟していたが,扁桃体は,個体の社会認知機能に重要な役割を持つ領域であり,これらの細胞群がモデル動物のそうした行動改善効果とどう関わるかが注目された。
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