Research Abstract |
肺癌は多数の臓器に転移を来すが,転移の生じる臓器は症例により異なる.どの臓器に転移しやすいかについて症例ごとに個性が異なると考えられる.個々の臓器への転移のしやすさを予測する遺伝子マーカーの検索はこれまで殆んどなされていない.本研究は,組織培養法を応用して複数臓器への同時多発転移をsimulateしたin vitroの実験系に,多数のヒト非小細胞肺癌細胞株をapplyし,マイクロアレイを用いて転移先臓器決定遺伝子群の同定を行うものである.具体的には,ヌードマウス摘出臓器片(肺,肝,腎,副腎,骨,筋)をヒト非小細胞肺癌細胞株とともに組織培養し,培養組織に生着,浸潤した細胞亜株を回収し,臓器上培養を繰り返した後の細胞性状の変化をマイクロアレイにて比較する. 本年度は,各種肺癌細胞株における臓器親和性の検討と,確立した亜株における遺伝子発現の変異を検討した.検討した細胞株6種のうち,2株では組織片上での生着が得られず,3株では一部の臓器,1株(PC-14)で6臓器全てから細胞を回収した.PC-14を臓器上で5継代したところ,肝を除く5臓器上で継代が可能であった.得られた細胞とoriginalの細胞株の遺伝子発現をマイクロアレイで比較したところ,5臓器全てで共通した変動を示す遺伝子はDUSP1の増加のみであり,これは実験系に依存するものと考えられた.変動遺伝子数は肺,腎,副腎,筋肉,骨について,それぞれ,57,70,20,29,23個であった.さらに多数の細胞株を検討し,各転移先臓器別に共通因子を抽出する必要があるものと考えられる.
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