2012 Fiscal Year Annual Research Report
女性生殖器系がんサバイバーのためのテーラーメイドケアの開発と評価
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21390585
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Research Institution | St. Luke's College of Nursing |
Principal Investigator |
飯岡 由紀子 聖路加国際大学, 看護学部, 准教授 (40275318)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 看護学 / がん看護学 / 女性生殖器系がん / テーラーメイドケア / がんサバイバー / ランダム化比較試験 / 介入研究 |
Research Abstract |
女性生殖器系がんサバイバーは、卵巣欠落症状、下肢リンパ浮腫、排泄障害などの術後合併症や、女性性の喪失感や自尊心低下などの苦痛を抱くことが多い。だが、サバイバーと関わる外来看護師は診療の補助を中心とした役割を担うことが多く、心理的支援や合併症へのケアは充実していない。本研究の目的は、外来診療形態を考慮し、女性生殖器系がんサバイバーを対象としたテーラーメイドケアを開発し、その効果を評価することである。テーラーメイドケアプログラムは、2つの要素(情報提供、集団学習会)から構成し、先行研究で行ってきたシステマティックレビュー結果を含めた。ケアプログラムの内容には、5つのテーマ(更年期症状、排泄障害、リンパ浮腫、心のケア、セクシュアリティ)に関するケアを含めた。集団学習会では、知識提供の他に医療者との相談時間や対象者同志の交流を含めている。 ランダム化比較試験の研究デザインを用いてデータ収集を開始した。対象者は子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんの手術終了後3ヶ月から1年未満の患者とした。また、スクリーニングチェックによりケアニーズの判定を行い、ケアニーズが有る患者のみを対象者とする。実験群にはテーラーメイドケアプログラムを行い、対照群は通常ケアとした。アウトカム指標には、患者と医療者の変化を含めた。患者の変化にはQOL、自己効力感、医療に対する満足感、合併症発症率などを、医療者の変化では職務満足度を測定する。データは、介入前後と3か月後に測定する。研究者所属施設及び3つの研究協力施設の研究倫理審査委員会の承認を得てから開始した。3つの研究協力施設は診療体制が類似している施設を選択し、婦人科外来及び病棟の医療スタッフと共にデータ収集を開始した。2014年末までデータ収集予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は女性生殖器系がんサバイバーを対象としたテーラーメイドケアを開発し、その効果を評価することである。先行研究として、外来治療を継続する女性生殖器系がんサバイバーの苦痛状況の実態調査を行った。更に、その実態調査から導き出された6つの健康課題(更年期症状、リンパ浮腫、メンタルヘルス、セクシュアリティ、排泄障害、再発時のケア)に関するシステマティックレビューを行った。しかし、このレビュープロセスにて看護研究の収集が十分ではないためキーワードの見直しに時間を要した。繰り返し検討を重ねたが、看護研究数の増加は僅かであった。限界はあったが、実態調査及びレビュー結果を基盤としてケアプログラムを構築した。このケアプログラム構築時には、ケアプログラムの実現性や継続性を重視し、現状の日本の医療事情(婦人科医師や外来看護師の人員不足など)を考慮し、効率性を重視したプログラムとした。 昨年度には、このケアプログラムの評価を行うためのランダム化比較試験の研究計画を立案し、研究者所属施設及び3つの研究協力施設の研究倫理審査の承認を得てデータ収集を開始した。この介入研究は、本研究の最終段階であり、最終的な評価段階に到達している。当初の予定では、データ収集開始時期は昨年度初期からであったためやや遅れたが、データ収集を開始できており、予定したプロセスを経過できている。3つの研究協力施設においてデータ収集を行っており、それぞれの施設にて統一した介入を行い、バイアスを極力減らすことに尽力している。今後の課題は、順調なデータ収集と、その結果によりケアプログラムの有効性を統計分析により示すことである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、3つのデータ収集施設の研究支援体制を整え、安定したデータ収集が行えるようにする。例えば、介入は臨床スタッフが中心となってケアプログラムを提供するが、質問紙の配布や回収は研究代表者の所属大学が担うなど、役割分担を明確にし、臨床スタッフの負担を軽減するよう努めている。3つの研究協力施設では、研究の推進を中心的に担う研究メンバーを配置し、そのメンバーが施設スタッフの運営を管理・調整するような体制を整えた。更に、リサーチアシスタントの配置を行い、データの不備がないようにしている。介入の一つである集団学習会では、ミニレクチャーと医療者との相談の機会を設けている。ミニレクチャーはイーラーニングを用いて行い、相談に関しては質疑応答に関するマニュアルを作成し、施設間格差を最小限にし、統一性を持たせるようにした。これらの体制を整えることにより、より確実なデータ収集につながると考えている。 2014年末までデータ収集を行い、その後は収集したデータの分析に進む。分析は統計学者のスーパーバイスを基に進める。群間比較には、対応のあるT検定を用いて有効性を評価する。群間比較にて有意差が示されない場合には、群内比較のための対応のないT検定を行う。本研究で開発した尺度については、因子分析や信頼性係数の算出を行った後に上記分析を行う。 本研究結果からは、ケアプログラムの有効性だけでなく、日本の婦人科外来看護の発展についても示唆が得られると考えるため、両者について考察する。研究結果は学会発表及び論文発表にて公表する。我が国では、婦人科領域に限らないが、外来看護の介入研究は極限られており、本研究結果を公表することは看護のエビデンス蓄積において意義を持つと考える。更に、同様の研究に携わる研究者との意見交換により、今後の発展性を検討する。
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