2010 Fiscal Year Annual Research Report
民俗信仰と創唱宗教の習合に関する比較民俗学的研究-仏英の五月祭の調査を中心に-
Project/Area Number |
21401044
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
関沢 まゆみ 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (00311134)
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Keywords | 五月祭 / 五月の木 / キュキュロン(Cucuron) / ヴァハージュ(Varages) / シュヴァル・ブロン(Cheval-Blanc) / 聖女チュール / パッドストーの木馬祭り / ヘルストンのヘーリー踊り |
Research Abstract |
昨年、祭りの執行次第等について予備調査を行なった南プロヴァンス地方のキュキュロン(Cucuron)において2010年5月22日に行なわれた「五月の木」の行事について、木の伐り出し、プロセシオン(木を担いでの行進)、教会の入口に木を立て、聖女チュールへの奉献、など一連の行事の実地調査とビデオ撮影を行なった。また、同地方のヴァハージュ(Varages)という町でも、プロヴァンサリストと呼ばれるプロヴァンス地方の伝統を守ろうとする若者たちによって、近年、町の聖人サン・ホタンに「五月の木」を捧げる行事が新しくつくられたことを確認した。しかし、キュキュロンでは18世紀にペストから町を守った聖女への信仰が「五月の木」の行事の背景にあるのに対し、ヴァハージュの場合、プロヴァンスの伝統行事を種々組み合わせて祭りを構成し、観光を目的としたイベントである点が異なることが明らかになった。また、キュキュロンに関して、『聖女チュールの五月の木-リュベロンにおける歴史と伝統-』(Rene VOLOT, Le mai de sanite Tulle ; Histoire et Tradition en Luberon, Editions CLC, 2003)の翻訳を行なった。またこれまで調査研究蓄積のあるブルターニュ地方とは異なる様相の、信仰よりもイベント的なプロヴァンス地方の祭礼行事の事例として、先に2003:年に聞き取りによる予備調査を行なっているシュヴァル・ブロン(Cheval-Blanc)の2011年2月25日~26日に行なわれた若者たちによる「ベルの祭り」と呼ばれる、四旬節の行事の実地調査を行なった。教会の関与は全くなく、かわって日常の秩序の逆転と祭りの最後に火で不浄なものを焼却するという火の信仰が特徴的であり、また、町の人だけでしかも参加したい人だけで行なうというタイプの祭りの運営が注目された。なお、イギリスの五月祭の調査も昨年、予備調査を行なった、コーンウォール地方の、パッドストーの木馬祭り、ヘルストンのヘーリー踊りなどの実地調査を行ない、観光化し活廃に行なわれていることが確認された。
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