2011 Fiscal Year Annual Research Report
ビュルガー収集のシーボルト標本による江戸の自然の体系化
Project/Area Number |
21401048
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田賀井 篤平 東京大学, 総合研究博物館, 名誉教授 (40011738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
大場 秀章 東京大学, 総合研究博物館, 名誉教授 (20004450)
白石 愛 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (60431839)
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Keywords | シーボルト / ビュルガー / 自然の体系 / 日本植物誌 / 日本動物誌 / 日本鉱物誌 / 江戸の自然史 |
Research Abstract |
江戸時代の後期に来日したシーボルトは、7年間滞在した。シーボルトは法制、歴史、芸術、民俗などの文化史的試資料や植物、動物、鉱物などの自然史試資料、また気候、測地データなど、あらゆる情報や標本を収集した。シーボルトコレクションは、このように、江戸時代の日本の文化、社会、環境などを物証できるただ一つ残されたコレクションである。シーボルトは「日本植物誌」・「日本動物誌」とともに「日本鉱物誌」の出版によって「日本の自然の体系」を完成させることを意図していた。「日本鉱物誌」のために、標本収集と原稿執筆をビュルガーに依頼した。ビュルガーは極めて優秀であり、シーボルト追放後も代わりに日本に留まり鉱物・植物・動物標本の収集を行い、オランダに送り続けた。本年度の研究から、ビュルガーばかりでなく、後の日本学の創始者と目されるホフマンも「日本鉱物誌」に協力したことがわかってきた。ビュルガーは、日本の地質・鉱物について記載を行ったばかりでなく、温泉水の分析、緯度経度の測定、温度・湿度・気圧などの測定を詳細に行った。ドイツの鉱物学者ヴェルナー著書で勉強したために、水生論に基づいた分類体系で地質・鉱物を記載していたこと、また江戸への参府に当たって、利用したルートが花崗岩などの偏った地質地域しか通過しなかったために、日本の地質が偏った地質分布で記載されていることを明らかにした。また、フロラヤポニカの執筆に当たって用いた重要なタイプ標本がミュンヘンの植物標本館に収蔵されていることを見いだした。現在、その記載を行いつつある。更に、ライデンの自然史博物館にある鉱物標本の一部が、当初は生薬として収集されたが、後年に旧国立地質学鉱物学博物館に移管されたことを明らかにした。その記載が民族学博物館の薬品として行われた事を示す文書を発掘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ライデン国立民族学博物館に収蔵されている標本には自然史に密接に関わっている標本が多数ある。例えば、生薬(鉱物・植物・動物)や金属素材などで、これらの標本についてカタログ出版を準備中である。また、ミュンヘン植物標本館に収蔵されている日本産植物のタイプ標本のカタログも準備中である。さらに、ビュルガーのシーボルト標本収集への貢献について、総合的な著作の出版に向けて、オランダの出版社ブリルと交渉を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ・ボーフム大学に収蔵されているシーボルト関連文書には、自然史標本に関する情報が多数存在することがわかった。また、ミュンヘンの植物標本館にはシーボルトのフロラヤポニカに関わるタイプ標本が残されている。 更に、ロンドン大英自然史博物館には、シーボルトの貝類標本が交換標本としてライデンから移管されたものがあることがわかった。これらの標本・情報は、これまで未検討であり、その中にビュルガーが関与したものがある可能性が高い。今後は、これらの標本・情報を調査検討して、江戸の自然の体系化を進めて行く。
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Research Products
(9 results)