2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21402010
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
村瀬 信也 Sophia University, 法学部, 教授 (80062660)
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Keywords | 国際環境法 / 気候変動 / 京都議定書 / COP15 / 共通だが差異ある責任 / 防止原則・予防原則 / 排出権取引 / 気温上昇 |
Research Abstract |
平成21年度は、気候変動問題を扱う京都議定書の問題点とポスト京都の法的枠組に関する分析を行い、気候変動の将来枠組の具体的な内容について検討した。また国際法協会気候変動委員会の委員長として各国から選出された30名の委員と共に、報告書の執筆を続けた。在外調査としては、温室効果ガスの主要排出国でありながら、京都議定書の排出削減義務を負っていない中国の汚染対策、気候変動政策の実情を調査するため、北京に赴き、現地リサイクル工場などの視察を行ったほか、中国環境省の副大臣をはじめ環境問題の専門家から、中国の環境問題に対する取り組みについて多くの教示を得た。また、お気候変動問題の最大の影響を受けているとされる南太平洋諸国(パラオ、フィジー、ツバル、バヌアツ等)の実情を把握するため、現地調査を実施し、海岸浸食・海面上昇状況の視察のほか、各国国務大臣、大統領、首相と会見し、南太平洋諸国の環境問題への取り組み、気候変動締約国コペンハーゲン会議(COP15)の問題点についての意見交換を行った。さらに、オランダ・ハーグでは、国際司法裁判所判事や法務官、滞在中の国際法学者やインド外務省法律顧問との意見交換、平和宮図書館での資料収集を行い、「司法」の側面から見た国際環境法の問題について教示を得た。以上の在外調査を経て明らかとなったのは、(1) 高度な経済成長を達成した途上国(中国、インドなど)には、温室効果ガス削減義務の履行能力、少なくともその意思があること、(2) 問題は、これら途上国において、気候変動問題や環境問題の科学的知識が不足しており、国際環境法の国内的履行制度(国内法の整備)が十分確立されていないこと、及び、(3) 先進国と途上国の政治的主張の対立の収束点を定め、一体となって気候変動問題に対処するような国際合意の内容が形成されていないこと、の3点である。このように本年度は、在外調査によって各国の実情と問題点を明らかとしたが、これを踏まえ、気候変動の将来枠組構想の提示に備えて準備を進めているところである。
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