2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21402010
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
村瀬 信也 上智大学, 法学部・国際関係法学科, 教授 (80062660)
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Keywords | 国際環境法 / 気候変動 / 京都議定書 / コペンハーゲン合意 / 共通だが差異ある責任 / 防止原則・予防原則 / 国際法協会 / 国際法委員会 |
Research Abstract |
平成22年度は、気候変動問題に関する一般国際法原則の内容について検討した。先進国の排出削減量を固定化し、途上国に削減義務を課さない京都議定書は、気候変動を防ぐための機能を果たさないまま「第一約束期間」の終了を目前に控え、次期枠組交渉の議論は拡散、対立は深刻化している。しかし、京都議定書も国家間の合意であるかぎり一般国際法上の諸原則による制約から免れることはできないはずである。国際法協会(International Law Association, ILA)では、「気候変動に関する法原則」に関する国際委員会の委員長を務め、一般国際法たる「共通だが差異ある責任」「衡平」「予防原則」「持続可能な発展」「信義誠実の原則」といった関連「法原則」を徹底的に再吟味する作業を開始し、第一報告書を作成した。今後は、これらの法原則を条文草案として成文化し、コメンタリーを付した「気候変動京都原則」を採択する予定である。また、委員を務める国連国際法委員会(International Law Commission, ILC)においても、筆者の提案する「大気の環境保護」に関する条文草案の中で気候変動を扱い、定義、適用範囲、目的、大気の法的地位といった「一般条項」(General Provisions)を検討した。「一般条項」については、ケニアでの在外調査において、環境法専門家とワークショップを行い、意見交換や条文草案の検討を行った。このように本年度は、国際法協会と国連国際法委員会という2つの場を中心に気候変動に関する一般条項や法原則を条文草案として作成した。今後は、これを踏まえ、基本原則や義務の履行、国家責任、紛争処理に関する国際法を法典化する作業を進めたいと考えている。
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