2011 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア極東再開発の潜在力と限界:中ロ経済相互依存関係から見る諸課題
Project/Area Number |
21402019
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
堀江 典生 富山大学, 極東地域研究センター, 教授 (50302245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
雲 和広 一橋大学, 経済研究所, 教授 (70314896)
辻 美代 流通科学大学, 総合政策学部, 教授 (30309489)
BELV Andrey 福井県立大学, 経済学部, 教授 (30305487)
高屋 和子 立命館大学, 経済学部, 准教授 (60411203)
武田 友加 一橋大学, 経済研究所, 講師 (70376573)
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Keywords | ロシア / 中ロ国境貿易 / ロシア極東開発 / ウラジオストク開発 |
Research Abstract |
本研究課題では、APECサミット開催にあわせたロシア極東開発計画を左右する諸条件を、(1)中ロ経済相互依存関係の変容、(2)ロシア政府の極東開発への実行可能性(開発計画及び地方財政)、(3)ロシア極東の人手不足を補う外国人労働者誘致の問題、という3点を検証しようとした。最終年度にあたり、本研究課題では最終年度を含むこれまでの現地調査および文献調査をもとに、それぞれの点について研究成果をまとめる作業を進めた。本研究課題の研究総括として,シンポジウム「中ロ国境地域:共生への期待と不安」を2012年3月に富山大学において開催し,研究分担者それぞれが各分野の専門家からのコメント・評価を受けた。研究分担者辻は,中ロ林業協力が中国による極東地域での違法伐採などの不正によって著しく阻害されていると示した。研究分担者高屋は,中国にとって対ロ農業投資は食糧安全保障上の意義はなく,また,対ロ農業投資は中国の余剰労働吸収とはならないとの見方を示した。研究代表者堀江は,ロシア極東地域における休耕地を活用した農業開発への投資が注目される中,中国人労働力なくして維持できないロシア極東地域では中国対ロ農業投資がロシアの資本や労働とうまく結びつかなければ,中国脅威論を再燃させる危険性があることを指摘した。研究分担者武田は,アムール州地域住民の生存戦略が農業の個人副業経営に依存している現状を説明した。研究分担者雲は,ロシア極東地域では将来的にも人口成長は見られず,限られた労働力と財政では現在の長期発展プログラムに多くの難点があることを指摘し,分担者ベロフも連邦予算投資主体の極東開発に代わる新たな地域開発モデルの必要性を示した。総括として,広大で人口・労働力過少な領土をもてあます「極東の呪い」と「中国脅威論」との克服が,今後ともロシア極東地域の発展の阻害要因になることを結論づけた。
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