Research Abstract |
平成21年度は,インドネシア・西ジャワ州のPHBMおよびインド・カルナータカ州およびマッディヤプラデーシュ州のJFMについて調査を行うとともに,ネパールのテライ地方で予備調査を実施した.インドとインドネシアに共通してみられた特徴として,いずれの国有林でも,われわれが森林インフラストラクチャーとよぶインベントリーや経営計画が確立しており,それぞれの林班を地元の村落に対応させ,合意を得るという手続きだけで共同森林管理の導入が可能であった.しかし権限の委譲にかかわる契約であるマイクロプランは必ずしも策定され,実行されてはいなかった.インドおよびジャワ島では,急速にJFMあるいはPHBMの面積が拡大したが,多くは名目的な存在であることが伺えた. それに対し,森林インフラストラクチャーに欠くネパールで,なぜ実質的なコミュニティ林業が展開し,生産機能まで担えているかについては,今年度の予備調査では明らかにしえなかった.ひとつの可能性として,長らく政府機能が停滞していた中で,村落レベルの自治機能が高まり,森林資源を利用して行政サービスまで提供するに至ったということが考えられる.しかし一方で,森林のもつ人口扶養力の限界と,森林からの受益者の限定は,一種のリーケージをもたらしている可能性が示唆された. 西ジャワでは,国有林外の樹木の配置についても調査を行い,原木難に直面した木材加工工場が,国有林や私有地の樹木の買い付けだけでなく,苗木の配布や買い取り契約を通じて,資源を確保しようとしていることが明らかになった.結果的に,PHBMに参加する住民が仲立ちになって,企業と国有林のパートナーシップが実現していたが,植林の成果は必ずしもよくなかった.その理由は,今後明らかにする予定である.
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