2011 Fiscal Year Annual Research Report
マルコフ過程理論を用いた遺伝的アルゴリズムの計算効率予測法の開発
Project/Area Number |
21500219
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
古谷 博史 宮崎大学, 工学部, 教授 (80145151)
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Keywords | 遺伝的アルゴリズム / マルコフ連鎖 / スキーマ理論 / 収束時間 / 非対称突然変異 |
Research Abstract |
本年度は,遺伝的アルゴリズム(GA)をOneMax ProblemとよばれるGAにおいてこれまでよく研究されてきた問題に適用したときの収束時間の予測法などについて研究した.この研究の中で,GAにおいて交叉が十分有効に働いた場合,OneMax Problemが非対称突然変異モデルと等価になることを示した.非対称突然変異とは,遺伝子Aが遺伝子Bに突然変異するときの突然変異率P1と遺伝子Bが遺伝子Aに突然変異するときの突然変異率P2が異なる生物の進化モデルである.非対称突然変異モデルについては,集団遺伝学において広汎な数理的研究の蓄積があり,様々な理論的解析が存在する.そこで,本研究ではこれらの結果をOneMax Problemに応用し,GAの進化過程に関する多くの数理的予測を得ることができた.特に,集団が定常解に収束する時間を予測する方法の開発に成功した.また,収束時間の突然変異率や集団の個体数への依存性について解析的表現を得た. GAでは,解を表現する2進ビット列のビット長が長くなるに従い,解空間の要素数が急激に増加していく.そのため,本研究ではスキーマとよばれる部分解に着目し,その振る舞いを調べた.その結果,OneMaxと非対称突然変異は同じスキーマ進化方程式に従うことが分かった.次にスキーマ進化方程式をマルコフ連鎖モデルにより確率論的進化方程式に変換した.得られたマルコフ連鎖の遷移行列についてはその固有値の解析的表現を導くことができた.マルコフ連鎖の最大固有値は1であるが,2番目に大きい固有値が進化の速度を決定する.その解析的表現から進化速度のパラメータ依存性を知ることができる.こうして得られた理論的結果を数値実験の結果と比較し,両者がよく一致することが分かった.また,こうした固有値を利用した方法以外にもマルコフ連鎖理論を応用した他の収束時間予測法の開発も行った.
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