2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500355
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
馬場 広子 Tokyo University of Pharmacy and Life Science, 薬学部, 教授 (40271499)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 髄鞘 / 軸索輸送 / グリア |
Research Abstract |
神経細胞が正常に機能する上で、細胞体でできた分子をランビエ絞輪や軸索末端のシナプス部位などの必要部位に運ぶ軸索輸送は重要な役割を果たす。近年髄鞘異常を伴う様々なマウスモデルを用いた解析から、髄鞘が局所の軸索輸送自体に影響を与える可能性が示されてきた。従って、軸索周囲のどのようなシグナルが軸索輸送に関連し、髄鞘異常で何故軸索輸送障害が引き起こされるのかを明らかにすることが重要と考える。そこで本研究では,髄鞘が軸索輸送に与える影響に関して明らかにすることを目的とする。平成21年度には,髄鞘異常を伴うマウスの神経系における軸索輸送の変化を解析した。その結果,髄鞘そのものはあるが,髄鞘両端(ランビエ絞輪隣接部)の髄鞘-軸索間結合が形成されないマウスの末梢神経軸索では,順行性および逆行性輸送のためのモーター関連分子の量的な変化と,ミトコンドリア輸送に関与するKIF1Bαやtauの絞輪部への異常集積がみられることがわかった。このマウスの末梢神経ランビエ絞輪部ではしばしば巨大化したミトコンドリアが観察されることをすでに報告しているが,今回得られた軸索輸送分子の異常が絞輪軸索のミトコンドリア異常に関与すると考えられた。また,同様な髄鞘変化を示す中枢神経系を解析した結果,小脳プルキンエ細胞の軸索にも部分的な腫脹が多数見られ,軸索輸送が加齢と共に進行することが明らかになった。しかし,プルキンエ細胞軸索では,末梢神経系と異なり,絞輪ではなく髄鞘に覆われた部分が腫脹していることから,両神経系共に髄鞘-軸索間結合の形成が軸索自体の輸送に関与するが,関与の仕方そのものは各々異なっていることが疑われた。以上の結果をもとに,次年度以降,末梢神経系に焦点をあて,髄鞘-軸索間結合がミトコンドリアなどの輸送にどのように影響するかを分子レベルでさらに解析する予定である。
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