2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500355
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
馬場 広子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40271499)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 髄鞘 / 神経軸索 / グリア |
Research Abstract |
神経細胞が正常に機能する上で、細胞体でできた分子をランビエ絞輪や軸索末端のシナプス部位などの必要部位に運ぶ軸索輸送は重要な役割を果たす。本研究では、軸索-髄鞘間結合(paranodal junction;PJ)が欠損したマウスにおいてしばしば軸索腫脹を認めることから、このマウスを用いて髄鞘異常に伴う軸索輸送変化を解析している。この結果、1)PJ欠損マウス小脳の軸索腫脹部分の電子顕微鏡解析では、プルキンエ細胞軸索内にミトコンドリアや膜状構造、小胞体などの細胞内小器官の異常集積が認められ、加齢と共にその変化がより顕著となり、40週齢以降では明らかな軸索変性を生じていた。本研究で以前に解析した同マウスの末梢神経軸索では異常がランビエ絞輪に集中していたのに対して、小脳ではほとんどすべての異常が髄鞘で覆われた軸索部分で生じていることから、軸索に対する髄鞘の作用は中枢と末梢で異なることがわかった。細胞内カルシウム濃度変化に関与するIP3R1は正常マウスのプルキンエ細胞では軸索全長にほぼ均一に分布するのに対して、PJ欠損マウスでは軸索腫脹部位に異常集積する。今回、当初計画していたスライス培養系によるプルキンエ軸索のカルシウム測定では明らかな結果を得ることができなかったが、IP3R1の局所的な異常集積は髄鞘が形成される生後12日頃から観察され始め、日齢とともに軸索が腫脹し、さらに軸索変性へと進行することから、髄鞘異常に伴う軸索局所のカルシウム濃度変化が軸索障害に関与すると考えられた。本研究を通じて、軸索機能維持に対する新たな髄鞘(特にPJ)の役割を明らかにすることができ、今後の軸索変性機序やその予防などの研究に役立つ重要な知見が得られた。これらの成果は国際学会および国内学会で発表し、現在投稿準備中である。
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