Research Abstract |
研究目的は,ストック歩行(PW:ポールウォーキング)の運動特性を解析し,高齢者や有疾患者に応用しその効果の検証と適切な運動処方を構築することである.そのため研究は3つに細分化される.1.健常者を対象にポールウォーキングの運動特性を解析する.2.高齢者,特に在宅高齢者が最も多く利用する施設であるデイサービスで応用し,地域在住高齢者の運動機能向上方法を確立するため,その介入効果を検証する.3.有疾患症例(変形性膝関節症など)へのポールウォーキングの応用とその効果を検証するである.本年度は2,3が終了した. 研究2.対象は,デイサービス4施設の利用者66名とし,それら施設を第3者により,デイサービスで通常に行われている歩行訓練を実施する施設(コントロール群)とPW実施施設(介入群)に無作為に割り付けた.対象者は自立歩行が可能もしくは監視レベルにて歩行が可能とし,ベースラインとして66名(コントロール群38名,介入群28名)を取り込んだ.介入はデイサービス利用時の週2日,1日10分を基準とした.最終評価実施者は56名(10名脱落)であり,コントロール群35名,介入群22名を解析対象とした.評価項目は,5m歩行時間,Timed up and go Test(TUG),開眼片足立ち時間,膝伸展筋力,SF-8および5秒間の静止立位姿勢解析とし,介入前後で比較検討を行った.その結果,介入群の方は有意に下位頸椎角度が改善(頭部の前方突出の軽減)しており,腰椎前後齊角度が減少していた.また,QOLの身体的サマリースコアーが介入群で有意に改善していた.また,コントロール群ではTUGが有意に低下し,介入群では変化がなかったため,介入群ではTUG,つまり歩行能力が維持できたと考えられた. 研究3.対象は,人工膝関節全置換術を実施する予定の変形性膝関節症症例12名とした.変形性膝関節症患者機能評価尺度JKOM,10m歩行速度および歩数,6分間歩行を,通常歩行,T字杖歩行,PWの3種類の歩行を実施した.その結果,PWは,T字杖と比較し歩幅が有意に増加した.また,6分間歩行距離は差がないものの.T字杖は有意に収縮期血圧の上昇したがPWでは有意な上昇がなかった.
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