Research Abstract |
本研究は,通学や買い物,旅行の際に用いる荷物の運搬方法の違いによる下肢の関節や脊柱への影響を,運動力学的に分析することで,関節に負担の少ない持ち運び方を提示することを目的としている,平成21年度の研究においては,運搬方法の違いによる,重心移動や下肢・体幹のモーメント,筋活動の比較を行ったが,動作解析装置の機能的問題により荷物の持ち方などに多少の制約が余儀なくされた.平成22年に,最新機種の3次元動作解析装置が導入され,カメラ性能の向上やマーカーの小型化が実現したため,より自然な姿勢でかつ詳細な情報を得ることが可能になった.したがって,当初に立てた研究計画に加えて,21年度に行った歩行時の実験を再度行った.加えて,当初の予定通り,各運搬姿勢における脊柱の静的アライメントの比較を行った 健常成人を対象とし,床反力計が設置された歩行路で,無負荷での歩行と体重の20%に相当する重量物を負荷した歩行を実施した.運搬方法として,「両肩で背負う」,「(前方で)両手で抱える」,「右手でさげる」,「右肩にかける」の4種類を設定した.筋活動は,左右の脊柱起立筋,中殿筋,外側広筋の計6筋を計測した.脊柱の静的アライメントの測定は,脊柱形状計測分析器(スパイナルマウス)を使用した 片手で持つ運搬方法では,対側の股関節のみではなく,対側脊柱や同側膝関節への過剰な負荷が加わることが示唆された.両手で抱える方法では,体重の2%の負荷で,両側の脊柱起立筋に,無負荷時の約2倍の筋活動を生じさせ,脊柱に大きな負荷が加わることが示唆された.今回の運搬方法の中では,両肩で背負う方法が,最も筋活動の増大を要しない運搬方法であることが示唆された 矢状面での静的アライメントの比較では,前方に持つことで無負荷時と比較して仙骨傾斜角の直立化(後傾増大)と胸椎後弯角の増大がみられた.現在3次元動作解析から得られた多量のデータを解析中である
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