2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500508
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
鎌田 一雄 Utsunomiya University, 工学研究科, 教授 (80016609)
|
Keywords | 緊急通報 / 手話 / ろう者 / 二言語通報 / ユニバーサル・デザイン / 情報アクセス / バリアフリー |
Research Abstract |
本研究は、緊急通報を情報のユニバーサル・デザイン課題の一つととらえ、ろう者に手話と日本語との2つの言語を用いた「二言語緊急通報の作成」を、どのようにすれば通報の役割(通報発令者の意図に沿った反応を通報受信者がとる)が達成されるかを総合的に議論することを目的としている. 本年度は、一つには、通報作成における2つの言語メディアの役割を探るために、ろう者の二言語通報の読み取り過程における視線(注視)特性の分析を行った.この結果から、読み取り特性は非常に多様であることがわかった.さらに、手話あるいは、日本語のいずれか一つの言語通報を主体とする読み方と、2つの言語通報を同じように活用する読み方との3つに分類できることと、それらの読み取り過程における注視の時間的特性とが明らかとなった. 他の一つは、通報作成(翻訳)における手話表現形態である.ことばの通常的な使用形態である会話態として手話通報を作成(通報の表現)をしようとすると、ある程度の翻訳技術を持つ聴者(手話通訳者)であれば誰でも翻訳ができると判断するには難しい要因があることもわかった.緊急通報のように、一方向的で非インタラクティブな通報伝達に適した表現形態(通報作成方法)は、通常の会話態とは異なる言語運用(言語現象)であると考え、会話態とは異なる翻訳へのアプローチに関する検討を行った.あわせて、手話通報の作成課題がユニバーサル・デザインの概念からはどのように解釈できるかについても検討した.これは、自然な会話態とは異なる手話表現形態を緊急的な通報作成(手話翻訳)で利用するという主張の一つの根拠となると考えている.
|