2010 Fiscal Year Annual Research Report
自律的観光開発を活用した伝統的居住文化の維持・保全に関する研究
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21500720
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Research Institution | Kyoto Saga University of Arts |
Principal Investigator |
藤木 庸介 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 准教授 (70314557)
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Keywords | 歴史的町並み / 伝統的建造物 / 居住文化 / リビングヘリテージ / 自律的観光 / 有松 / 二川宿 / 重要伝統的建造物群保存地区 |
Research Abstract |
平成22年度の研究では研究対象地区の内、特に「二川宿」における伝統的建造物の使用実態に関する調査、並びに、「有松地区」における最も古い時期の建造と考えられる「山田家住宅」の実測調査を行った。また、有松地区における「有松まちづくりの会」、並びに二川宿における「二川宿まちづくり会」の定例会と各種イベントへ参加し、各地区におけるまちづくりへの取り組みについて理解を深めた。 「二川宿」における伝統的建造物の使用実態に関する調査では、街道に面した母屋の使用が希薄化し、街道に対して母屋の背後に増築された部分に主な生活機能が移動している事が明らかとなった、しかし、こうした事例においても、盆正月や祭事には街道に面した母屋を使用しており、引き続き母屋の使用が限定的ながら継続されている。 「山田家住宅」における実測調査では、寛政3年(1791年)の建造を示す棟札を発見するに至った。有松地区は天明4年(1784年)の大火によってほぼ全域の建造物を焼失している。したがって、当該住宅は有松に現存する最も古い時代の建造物である事が明らかとなった。また、当該住宅の小屋組は、既往文献に参照して類似するものが無く、独自性の高い小屋組である事も併せて明らかとなったが、当該小屋組の発生事由については現在のところ明らかではなく、次年度における追調査を必要とするものである。 各地区のまちづくりへの取り組みに対して、二川宿では、歴史的町並みや伝統的建造物の維持・保全に固執する事なく、現状として、これらのものを活用しながら新たなまちづくりを行おうとする指向性が見られる一方、有松地区では、歴史的町並みや伝統的建造物の維持・保全を重要課題と捉え、「重要伝統的建造物群保存地区」選定を目標に、当該地域の主要産業である「絞り産業」を活性させようとする指向性を読み取る事が可能である。
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