2011 Fiscal Year Annual Research Report
自律的観光開発を活用した伝統的居住文化の維持・保全に関する研究
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21500720
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Research Institution | Kyoto Saga University of Arts |
Principal Investigator |
藤木 庸介 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 准教授 (70314557)
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Keywords | 生活文化 / 伝統的民家 / 歴史的町並み / リビングヘリテージ / 観光 |
Research Abstract |
平成23年度の研究では、本研究課題の総括として、特に今後における歴史的町並みの観光利用が期待される「有松地区」について、これまでに名古屋市が主体となって行ってきた町並みの修理修景事業(法的拘束力を持たぬ施策)に対する評価を行った。またこれとは別に、本研究対象である、愛知県内の旧東海道沿いにおける今後の観光利用が見込まれる歴史文化的資源について、その現状に対する悉皆調査を行い、データベース化を行った。 有松地区における町並み整備事業の評価、並びに、今後への課題について、概要を下記に記す。 1.修理修景事業による助成金の活用により、助成を受けた建造物の8割において、伝統的意匠を踏襲する建造物の修理が行われている。 2.伝統的建造物の「外観の維持・復元」の観点から、修理修景事業では素材を「木製」と定めているが、アルミサッシの使用など、住まい手の意思が優先される傾向が認められる。 3.駐車場確保といった視点から、外壁を後退して薪築される事例や塀の撤去が認められる。 4.伝統的意匠を踏襲しない建築行為は、当該事業による助成を受けていない事例に顕著である。愛知県内旧東海道沿いにおける歴史文化的資源について、概要を下記に記す。 1.歴史文化的資源は、有松地区、ついで二川地区に多いが、その他の地区にも散見さ、これを維持する事が求められる。 2.まちづくり施策、並びにこれに類する施策を実施している地域において、歴史的文化資源の残存度は高い。 3.松並木では、その多くが補植であるものの、行政や住民団体による景観保全が行われている。 以上から、歴史的町並み、並びに歴史文化的資源の維持・保全は、行政施策や住民意識に密接に関与する事が明らかとなった。今後は、更なる行政施策の充実と共に、住民に対する当該歴史的資源のリビングヘリテージとして位置づけと認識を促進させ、これを主体的に維持する為のシステム構築が望まれる。
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