Research Abstract |
本研究は,奄美・沖縄離島を島レベル、市町村レベル、字レベルで経済、社会、環境に関する諸指標をデータベース化した上で島嶼GISを構築し、それをもとに各島の脆弱性指数を算出して島嶼における脆弱性の空間構造を考察するものである。本年度は昨年度から継続している島嶼データベースの完成,それをもとにした島嶼GISの作成,そして脆弱性の概念や脆弱性指数の検討および現地調査を行った。 まず,島嶼データベースであるが,奄美・沖縄の市町村ごとに老年化指数,財政力指数,生活保護率,自治会組織化率,可能耕地面積率,船舶航空欠航率,廃棄物処理率,上下水道整備率など経済,社会,環境に関する指標を取りこみ,それを沖縄の本土復帰後1975年以降5年おきに2005年まで時系列的にデータベース化した。昨年度作成した字別基本統計データベースと合わせて,島嶼データベースが完成した。これにより今後脆弱性指数を算出する基礎となるとともに,様々な離島に関する統計分析が可能になる。 島嶼GISについては,奄美・沖縄離島に関する地形図をはじめ,空中写真や画像データなどのラスターデータを準備し,スキャナなどを利用してGISソフトに取り込みはじめた。これは最終年度に完成する予定である。 現地調査については,奄美大島,粟国島,大東島,伊江島において,特に海上交通が欠航した場合の物流面の脆弱性について,海運業者や卸売・小売業者など流通業者に聞き取り調査を実施した。 研究成果については,脆弱性の概念について英語圏の先例研究を参照し,3月に行われた日本地理学会で報告した。また,奄美・沖縄離島の経済構造の変容を脆弱性の視点を加味して考察した論文を「島嶼研究11号」に発表した。
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