Research Abstract |
本年度の研究目標は,(1)九州の二侵入地(日南市,指宿市)における季節的温度変化を追跡し,定着を可能とした温度条件を探ること,(2)日南市において生息密度調査を行うこと,(3)奄美大島にて生態調査を行うこと,(4)既存の潜在的競合種(トカゲ,ヤモリ類)及び餌となる無脊椎動物類に対する影響に関わるデータを収集すること,(5)効率捕獲法の探索,(5)低温耐性能力に関する研究への着手であった.(1)については,温度データロガーにより年間を通した1時間毎の温度測定を行い,林床部において日南市で1時間程度0度以下になる頻度が年1~数回,指宿市においては0度以下になることはほとんどないことが分かった.なお(4)に関わる低温暴露実験により,-2℃を境界としてそれ以下の温度に3時間以上晒すと身体機能の回復が不可能であるという成果が得られ,日南市の最低気温は本種の越冬を可能とする温度範囲内にあることが確かめられた.本下限温度条件下では,本種の分布拡大は九州南部沿岸部のみであろうと予測されることになった.(2)については,記号放逐法調査により,1回のラインセンサス調査で発見される約5倍の個体数が,実際には生息していることが判明した.また,環境選好性の調査により,自然林内,森林外縁部での密度が高いことが分かった.(3)奄美大島での集中的生態調査は,調査者が口蹄疫感染県に生活していた関係上実施を断念したが,太田が石垣島,沖縄本島,奄美大島に温度ロガーを設置した.データはH23年度に回収する予定である.(4)については,ルートセンサス及び捕獲個体の胃内容物分析が現在進行中である.(5)については,動物倫理上の観点から,今後手捕獲及びボトル式ワナを用いることを決めた.また,日南市との協議の結果,H23年度から駆除班を組織して捕獲作業を継続的に実施することになり,分布拡大防止対策が前進することになった.
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