2011 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅の危機に瀕するサクライソウの保全のための基礎研究
Project/Area Number |
21510240
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
高橋 弘 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40021331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸部 博 京都大学, 理学研究科, 教授 (60089604)
遊川 知久 国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (50280524)
牧 雅之 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60263985)
津田 智 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (50212056)
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Keywords | サクライソウ / 絶滅危惧植物 / 保全 / 菌従属栄養植物 / AM菌 |
Research Abstract |
1.生育環境:一昨年と昨年に引き続き調査を行い、どの集団も相対照度が10%以下で、強酸性土壌に生育することを確認した。 2.種子発芽試験:高山集団と木曽集団で埋土しておいた種子のうち、2011年7月の調査では1年8ヶ月経過した種子において、高山集団で約2%、木曽集団で約24%の発芽がみられ、2011年12月の調査では2年経過した種子において高山集団で約25%、木曽集団で約22%の発芽がみられた。しかし、埋土してから1年未満の種子は発芽していなかった。昨年までの結果を総合すると、発芽には共生菌の作用を必要とすることが示唆される。 3.フェノロジー:可児、木曽、高山の集団は、全体的には6月に地上茎が出現し、7月下旬から8月上旬に開花、10月に種子散布をするが、平均気温の高い順にサイクルが早い傾向にあるという、これまでの観察された経緯とほとんど同様であることを確認した。奄美の集団は、調査に訪れた7月上旬は、既に開花からかなり経過した個体が多かったが、開花したばかりの個体も混じっていた。現地在住の方から得た情報では例年6月上旬に開花するとのことであり、少なくともこの年は1ヶ月に渡って開花が続いたことが示唆された。 4.植生:可児、木曽、高山の集団はヒノキと落葉樹からなる林、多治見と奄美の集団は主に常緑樹からなる林であるが、どこも林床には草本が少ないことが判明した。 5.送粉昆虫:小型のハナバチとアブが確認された。これはこれまでの観察と同様である。 6.近交弱勢:高山集団で行った受粉実験結果を分析した結果、ここのサクライソウには近交弱勢が認められた。 7.AM菌の集団構造解析:サクライソウはAM菌と共生し、しかも特定のAM菌に極めて高い特異性をもつことが判明したことにより、この高い特異性が生育や分布の制限要因となっていると予測される。この仮説検証のため、個体数の現象が著しい可児集団と多数の個体が維持されている木曽集団で、AM菌の集団構造解析を開始した。
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Research Products
(3 results)