2011 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋沿岸の泥炭地湿原における高茎湿生草原の成立・維持機構の解明とその保全
Project/Area Number |
21510242
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
矢部 和夫 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (80290683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 幸男 専修大学北海道短期大学, みどりの総合科学科, 教授 (80193291)
山田 浩之 北海道大学, 大学院・農学研究院, 助教 (10374620)
金子 正美 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (00347767)
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Keywords | 高茎湿生草原 / fen meadow / ハンノキ林 / 年齢解析 / 湿原面積 / 無機イオン / 窒素負荷 / 水位 |
Research Abstract |
1)空中写真判読による1975年と2009年の間に起こったウトナイ湖地域の植生変動の解析 ウトナイ湖とその周辺地域で、1975年と2009年に得られたカラー画像を現地調査との併用で解析した。湿地域は35年間に最も激しく変化した。ハンノキ林は90.54ha増加したが、高茎湿生草原とホザキシモツケ群落は79.20ha減少した。北西部における高茎湿生草原はハンノキ林とホザキシモツケ群落に駆逐され減少した。ホザキシモツケ群落はハンノキ林に駆逐されつつも、一方で高茎湿生草原を駆逐して増えており、その変化は他の2群落と同様に大きかった。湿地域の急激な植生変化は、1970年代に起こった急激なウトナイ湖の水位低下に誘発された可能性が指摘される。 2)年輪判読によって解析されたウトナイ湖北西岸におけるハンノキ林の侵入、成立過程 ハンノキの年齢は南側のA~Cでは50年~25年であるのに対して、北側の帯状区DとEではわずかに若くて45年~20年程度であった。したがって、北西岸でのハンノキ林の侵入、成立は20年ほど前にはすでに終了しているといえる。 3)ウトナイ湖北西岸における高茎湿生草原の分布を規定する水文化学条件の解明 50ヵ所の調査定点を設置して、2010年6月から10月末まで計6回の水質調査を行った。高茎湿生草原はハンノキ林とフェンの中間的な水分環境に成立しており、他の群落に比べて無機イオン濃度が低かった。夏期の大雨後の水位上昇で高茎湿生草原への湖水の流入が可能であったが、イオンの顕著な変動はなく、高茎湿生草原の無機イオンは低濃度を維持していた。NO_3^-やT-Nの濃度変化は見られず、高濃度の窒素を含む美々川の水は流入していなかった。 以上のことより、ウトナイ湖水位の堰上げは塩類濃度を上げないで水分条件を改善するため、高茎湿生草原の分布環境を拡大するための有効な方法の一つである。
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Research Products
(6 results)