Research Abstract |
本研究は,日本の都市の路上(ストリート)をフィールドに,グローバルなディアスポラのモチーフが,ストリートの表現文化にどのように受容され,その表現文化をどのように変容させているかを探ると同時に,それらのディアスポラ的・周縁的なモチーフがつねにさらされている社会的排除の圧力や緊張が,この表現文化にどのような性格を与えているかを,主にフィールドワークとインタビューによって,具体的かつ実践的に調査し考察するものである. 2009年度は,東京都渋谷区宮下公園の「ナイキパーク」化計画の問題を中心に,日本の都市空間における「公共性」をめぐる対立に焦点を絞って,宮下公園で活動するアーチストや表現者へのインタビューやフィールドワークを行った.「大学」と「路上」を結ぶ知の協働を生みだすべく,研究者,アーチスト,活動家らの連携からなる領域横断的な研究会「ストリート研究会」を組織し,研究体制の構築をはかるとともに,早稲田大学メディアシティズンシップ研究所,246表現者会議,みんなの宮下公園をナイキ公園化計画から守る会との協力関係のもと,早稲田大学と宮下公園(雨天により会場変更)の双方で,公開シンポジウムを開催した. こうした活動を通じて,社会的排除の緊張のもとに生成する表現文化の「現場」と,大学やメディアにおける知の生産の間の乖離を問題化する,批評的かつ実践的な視座を構築するとともに,さまざまな出自や文化的背景をもった人々の,横断的で異種混交的な出会いの場としての「公園」(=公共空間)の新しい意味づけと,「公共」(=行政とグローバル資本の提携)の名のもとに行われる社会的排除に抵抗する,新たな「公共性」の創出の論理が明らかになりつつある.
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