Research Abstract |
2009年度から本研究が集中的に取り組んできた,渋谷区宮下公園の「ナイキ化」に反対するアーチストの運動は,宮下公園改修工事の終了によってひとつのサイクルを終えた. 2011年度の本研究は,東日本大震災および福島原発事故以降,日本の各地で盛んに行われるようになった脱原発デモや,また海外の「オキュパイ」運動などとも呼応しながら新たな表現形態を発展させてきたプレカリアートのアクティヴィズムに注目し,前年度までに引き続いてストリート研究会(代表:浜邦彦)を研究活動の場として,主に首都圏の脱原発にかかわるアクティヴィズムの映像記録や映像作品の政策に携わっている作家やアーティストの協力を得た. 2011年3月~4月,原発事故へのリアクションとしてもっとも早い時期に組織されたデモが,渋谷区宮下公園の「ナイキ化」に反対する活動と,高円寺「素人の乱」のネットワークによるものであったことは意義深い.その後も下北沢,杉並,国立といった,それぞれのローカリティをもった創発的な表現文化が世代を超えて浸透し,主にインターネットを介して共有され,触発し合ってきた.この「クラウド化するデモ」の政治学的な意義については,五野井郁夫『「デモ』とは何か-変貌する直接民主主義』(2012)が理論化した. ストリート研究会では,この間のフィールドワークを通じてアーチスト,活動家,ジャーナリスト,研究者らから大量の資料や映像記録の提供を受けており,これらの整理とアーカイブ化についての議論を重ねてきた.研究成果のまとめとして,早稲田大学浜邦彦研究室に映像アーカイブを置き,試験的な運用を試みているが,本格的な運用のためには課題も多く(管理維持,肖像権や著作権の問題など),収集した資料の保管をもって一応の成果とするほかないのが現状である.
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