2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520020
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
八幡 英幸 Kumamoto University, 教育学部, 教授 (70284718)
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Keywords | 倫理学 / 語り / 生命倫理 / 思想史 / 判断力 |
Research Abstract |
研究計画では、【理論面】の課題として、物語倫理の浸透状況とその理論的背景の把握をまず予定していたが、本年度公表するに至った研究成果は、主として「物語倫理はどのような場面・文脈で要請されるのか」という問いに関係するものである。論文「医療・介護/介助のシステムと人間の倫理」(『生命/環境の哲学』所収)と、論文「医学的介入の論理と障害の概念-「何もしないより、何かよいことをしたほうがよい」か」(『医療の本質』所収)では、「人の誕生」に関わる生命倫理問題に関連して普遍主義的-規則定立的な倫理が限界に直面し、物語倫理が要請されるに至る経緯を明らかにした。また、物語倫理との関係が指摘されているカントの判断力論に関する思想史的研究として、論文「判断力の自己自律-1780年代中期のカントに生じた思想的転回-」(『判断力の問題圏』所収)を公表した。メタ倫理学の視点からの考察「生命の価値は実在するか-近代思想のメタ倫理学的回顧」(『生命という価値』所収)もこれに関連する。なお、これらの研究成果はいずれも論文集(共著)の形で公表された(される)ものである。 他方、【実践面】の課題として予定していた「語り」の収集については、地域のNPO(自立生活支援センター)の協力の下、出生前診断などの生命倫理問題に関連するライフ・ストーリーを持つ人へのインタビューを実施し、その内容を音声・文書データとして蓄積している段階である。これまでにインタビューの対象としたのは、脳性マヒ、進行性筋ジストロフィー、ウェルニッヒ・ホフマン病、小児麻痺、パーキンソン病などに起因する障害を持つ人々である。今後もこの面での作業を続行し、【理論面】の作業との総合を図りつつ、ライフ・ヒストリーの記述・分析の段階に進む予定である。
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Research Products
(4 results)