2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的宗教と他界的宗教の統合的研究のための理論構築
Project/Area Number |
21520064
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津城 寛文 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30212054)
|
Keywords | 宗教学 / 社会系心理学 / 社会学 / 思想史 |
Research Abstract |
23年度は、中間報告を発表する予定であったが、想定していた以上に作業が進展し、単著という形で広く学会に問いかけることができた(『社会的宗教と他界的宗教のあいだ-見え隠れする死者』世界思想社、2011年8月刊)。 公刊から半年を経て、多方面からの反応が得られつつあり、残りの期間に行うべき課題を再考する一助となっている。 さまざまなコメントのうち、評価するものとしては、社会的宗教を考える際の私の戦略的なキーワードである「公共宗教」のスキームが、今回の著書でさらにわかりやすく展開されている、というものがあった(私信)。書評がまだ出ていないため、細かい批判は耳に入っていない。いずれ書評、合評会などの機会に、問題点が浮き彫りにされるものと期待している。 今回の成果で重要なのは、社会的宗教と他界的宗教の関係を、1つの回路に組み込む試みを提案したことである(『社会的宗教と他界的宗教のあいだ』終章)。 宗教を含む社会や文化のリアリティは、人間の相互作用によって構築されるという、いわゆる構築主義の回路が、「宗教と社会」の研究では優勢である。他方、「宗教と他界」の研究においては、人間の相互作用を超えた、「超越」「超自然」などの介入が、考慮されている。 この介入を、構築主義の回路に接続することで、「宗教と社会」を研究する視座、「宗教と他界」を研究する視座を、緊密に結び付けることが可能になる。少なくとも、この回路図を示すことによって、2つの視座の他方を無視することは、かなり困難になる。そうした研究上の視座を浮き彫りにしたという意味で、この回路図は重要であると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「宗教と社会」、「宗教と他界」をめぐる宗教研究が、主題や方法のあらゆる面で分離しがちであるとの現状理解から、両者を統合的に研究するための理論構築を目指しているが、中間報告として、関係学会に広く問いかけるべく、単著の形にまとまった。事実上、このレベルを、本課題の最終報告として想定していたので、想定外に早く進展しているものと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「宗教と社会」および「宗教と他界」という、2つの関心領域の位置関係については、おおまかな見通しを示すことができた。その上で、「宗教と他界」の研究を、人文社会科学研究全体の中に、どのように位置付けるか、というのが、つぎの問題意識である。射程を広げて、「宗教と他界」の位置測定を試みる。 また、現在の日本の社会的および精神的状況において、死、死後、死者の問題が、多くの人にとって重大な関心事となってきている。本研究は、この関心に直接応答する内容を含んでいる。社会への貢献として、研究成果を広く社会に発信する作業を、一般書、新聞雑誌原稿、公開講座その他を通じて、積極的に進めたい。
|
Research Products
(4 results)