2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会的宗教と他界的宗教の統合的研究のための理論構築
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21520064
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
津城 寛文 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30212054)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 公共性 / スピリチュアリティ |
Research Abstract |
平成23年度の中間報告(単著『社会的宗教と他界的宗教のあいだ――見え隠れする死者』世界思想社、2011年8月)を受けて、統合的研究のための、一程度の枠組みがはっきりしたので、平成24年度はその上に立って、いくつかの各論を展開した。 発表としては、メインの所属である日本宗教学会学術大会で、「空想的社会主義と近代スピリチュアリズムのあいだ」というテーマで、研究発表を行った。空想的社会的現象の1つである社会主義と、他界的現象の1つである近代スピリチュアリズムとの、意外な近接関係を明らかにすることができたと思う。関連する研究会では、ベルクソンやフーコーといったフランス哲学の系譜に、社会と個人、身心の相関の議論を読み込んでみた。 論文としては、どう宗教学会での発表を、「善い社会のビジョン――ユートピア社会主義と近代スピリチュアリズムのあいだ」(『宗教学論集(駒沢宗教学研究会)』2013年1月)として、公刊した。ベルクソンやフーコーの読み込みについては、別の基盤研究(A)の分担研究者として、そちらの報告書に発表した。 成果の社会的還元としては、勤務校の公開講座「宗教学の観点から<お迎え>の迎え方を考える」を、また地域の企業メセナの企画で、「比較宗教から学ぶ「死」と「死後」」を、提供した。 本課題の研究から、社会的宗教と他界的宗教の枠組みとして浮き彫りになってきたのは、それぞれのキーワードである「公共性」と「スピリチュアリティ」を、「合法性」というキーワードのサブキーワードとすることで、より統合的な議論が可能になるのではないかという見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、社会的宗教と他界的宗教の統合的な研究のための、理論的な枠組みを作ることであった。その、目的は、23年度の中間報告で、半ば達成されており、24年度は、その枠組みをもとに、個別研究、一般研究を試みてみた。 その課程で、次なる課題である、宗教活動の(非)合法性という問題が、浮き彫りになってきた。合法性は、宗教が社会に貢献するため、社会に害悪をもたらさないために、必須の要件であることは当然であるが、その意味が、社会的宗教・他界的宗教という対比から、明らかになったことは、当初の予想を超える成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度について述べたように、最終年度である25年度は、課題の総括・報告とともに、すで次の課題が射程に入ってきているので、その橋渡しの作業にとりかかりたい。 宗教の合法性・非合法性を問題にする場合、ただちに問われるのは、どの「法」を基準にした合法性なのか、ということである。おおまかにいえば、さまざまなレベルの法に対して、さまざまな合法性があり、それらは相互に矛盾したり、強めあったりする、ということである。 個人研究ではあるが、関連分野の研究者仲間との交流を深めて、学際的な方法も組み込んで、総合的な研究を進めたい。
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Research Products
(3 results)