2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520119
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Research Institution | The Association for the Advancement of Fine Arts, Osaka |
Principal Investigator |
出川 哲朗 The Association for the Advancement of Fine Arts, Osaka, 大阪市立東洋陶磁美術館, 館長兼学芸課長 (50373519)
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Keywords | 中国陶磁 / 明時代 / 官窯 |
Research Abstract |
中国陶磁史研究においては、作品の年代を考察することは、基本的な前提条件である。特に、中国の官窯製品についてはこれまで、多数の研究によって編年が明らかにされつつある。本研究は官窯のなかでも特に明代初期の官窯の形成について焦点をあてている。明代初期に景徳鎮において、御器廠が設置され、これが明王朝の官窯である。しかし、明初においては、宮廷での盛んな需要から、景徳鎮以外でも宮廷用の陶磁器が生産された可能性がある。平成21年度の研究では、河南省禹州市で発見されている鈞窯の窯址出土品の調査を行った。鈞窯の官窯タイプについてはこれまで北宋時代とされてきたが、近年の研究では金時代の可能性が指摘され、また最近出土した官窯タイプでは元時代のものと推定されるようになった。禹州市にある鈞窯の窯址の調査を行い、ついで、最近発見された官窯タイプの鈞窯の出土地についても現地調査を行った。また、鈞窯の中心的な生産地である神后鎮を訪問し、鈞窯の出土品を調査した。さらに、鄭州市にある河南省考古研究所において、出土した官窯タイプの鈞窯を調査した結果、2種類の官窯タイプの製品があることが分かった。これまで、官窯タイプの鈞窯について元時代説が有力となってきていたが、あらためて調査した結果、やや粗製のものが元時代に属するもので、その窯址は従来官窯タイプの鈞窯の窯址とされていた禹州市内の場所とはやや離れたところであることも分かった。この結果、これまで元代説と北宋代ないし金代とされていた鈞窯については同一のものではなく、時代の異なる製品であると推測される。また、北宋代ないし金代のものとされる鈞窯が明初のものである可能性がさらに高くなった。この編年においては、現在、中国国内の陶磁研究者も重大な関心をもって研究をすすめている。
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