2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520119
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
出川 哲朗 財団法人大阪市博物館協会, 大阪市立東洋陶磁器美術館, 館長兼学芸課長 (50373519)
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Keywords | 中国陶磁 / 官窯 |
Research Abstract |
研究目的は、これまでの鈞窯に対する編年の見直しであり、この結果を踏まえて、明代初期の官窯の陶磁器生産の様相を解明することである。平成21年度には中国河南省の窯址出土の陶片について、調査を行い、平成22年度は伝世している官窯タイプの鈞窯について調査を行った。 ハーバード大学美術館は63点の官窯タイプの鈞窯をはじめ、全97点の鈞窯を所蔵し、中国以外では最大のコレクションを誇っている。それらのほとんどが未公開であるが、特別観覧の許可を得て、この鈞窯コレクションを平成23年3月にハーバード大学美術館で調査を行った。このコレクションは1920年代に形成されたもので、中国陶磁コレクションとして世界的に著名なパーシヴァル・デイヴィッド卿のアドバイスにより、デーン氏が鈞窯を集中的にコレクションし、1942年にハーバード大学フォッグ美術館に寄贈したものである。ハーバード大学美術館の豊富な鈞窯コレクションのなかには、盤と鉢とのセットのものもあり、また同じ器型の鈞窯でも様々なサイズのものがそろっていた。 今回の調査で、官窯タイプの鈞窯について新しい知見が得られた。官窯タイプの鈞窯についてはこれまでの研究でほぼ宋代ではなく、元代あるいは明初とされてきている。平成21年度に調査したものは元代末の可能性もあるが、今回調査した官窯タイプの鈞窯では、制作技法の面から、2つに分類することができる。それらはいずれも、元時代のものではなく、永楽期の官窯タイプの鈞窯であり、もう一つのタイプは、後の時代の、おそらくは清朝時代に倣製品として作られた可能性のあるものである。これまでの調査研究の成果として、同じ器型の鈞窯でも、元時代のもの、明初のもの、そして清時代のものという3つの時代の可能性を考慮する必要があると思われる。 この点については、平成23年度以降の研究で検討を行っていく予定である。
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