2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520119
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
出川 哲朗 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪市立東洋陶磁美術館, 館長兼学芸課長 (50373519)
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Keywords | 中国陶磁 / 明代 / 官窯 |
Research Abstract |
中国陶磁の官窯即ち宮廷が制作に直接関与する窯は歴代の宮廷が管理してきたが、明初の官窯については不明な点が多くあり、平成23年度はこれまでの研究を引き続き行った。明初の官窯の様相を明らかとするために、かつて紫禁城に伝世していたとおもわれる明代初期の官窯磁器の調査がかかせず、故宮博物院以外では最大の中国陶磁コレクションとされている大英博物館での鈞窯の調査を行った。平成22年度にハーバード大学博物館の鈞窯について調査を踏まえて、明初の鈞窯の特色について出来るだけ多くの作例の調査を行うこととした。大英博物館に近年寄託されたパーシヴァル・デイヴィッド卿のコレクションを中心に調査を行った。また、ヴィクトリア&アルバート美術館においても鈞窯のコレクションがあり、20世紀前半にかなりの数量の鈞窯が英国で収集されたことが分かった。これらの作品に共通する特徴も明らかとなり、作品の調査により制作された時代は極めて限定された期間のものと思われた。また明初の龍泉窯青磁で宮廷用のものについても調査を行うことができた。この伝世品と龍泉窯楓洞岩窯出土品と比較し、これらが明初のものであること、特に洪武期から永楽期のものと考えられた。従来、明初の官窯は景徳鎮の御器廠の製品だけであると考えられてきたが、この調査などから、明初の官窯の多様性がしめされた。明初の龍泉窯については楓洞岩窯の出土品が宮廷に貢磁として制作された遺品と考えられている。この遺品は景徳鎮窯の御器廠の洪武期、永楽期の青花盤と文様の類似性が高く、かつ、遺品の廃棄の方法についても官窯の窯址でしばしばみることのできる、一括した廃棄法がとられている。この件に関しては「国際交流企画展明代龍泉窯青磁-大窯風洞岩窯址発掘成果展」(2011年)の展覧会図録で「明初の宮廷用磁器の焼成と楓洞岸発掘調査の意義」においても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鈞窯と龍泉窯については、調査はほぼ予定どおり進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として、鈞窯、龍泉窯に加え、景徳鎮窯の明初の官窯磁器について、さらに調査を行う。
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Research Products
(2 results)