2011 Fiscal Year Annual Research Report
アジアの木地螺鈿―その源流、正倉院宝物への道をたどる―
Project/Area Number |
21520120
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 |
Principal Investigator |
小林 公治 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部・文化財課・資料管理室, 室長 (70195775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪熊 兼樹 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部・列品管理課貸与特別観覧室, 主任研究員 (30416557)
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Keywords | アジア / 螺鈿 / 正倉院 / ベトナム / 唐 / 中国 / 木地螺鈿 / 螺鈿鏡 |
Research Abstract |
今年度は、中国・ベトナム、日本国内において調査、講演を行い、またこれまでの成果についてその一部を公表した。 中国では、殷周時代から清代に至る長い中国螺鈿史のはらむ問題点のいくつかについて発表するとともに、雑誌論文として中国語で公表した。調査は、山西省・陜西省・北京・江蘇省・浙江省の各地で実施したが、清代の木地螺鈿家具は、先年調査した広州製の螺鈿に加え、浙江省の各地で製作されてきた可能性が強まり、それらは文様様式を異にする可能性がわかってきた。浙江省製の木地螺鈿家具については明らかな事例がまだほとんど無く、今後の調査と事例集成が重要である。この他、山西省螺鈿工房において、これまで沖縄の事例しか知られていなかった煮貝法が、中国に現在も存在することが初めて分かったことなど、いくつかの重要な成果があった。 ベトナムでは、ハノイのベトナム国家博物館において副館長3名をはじめとする館員約50名に対して、ベトナムの螺鈿について講演することができた。ベトナムにおいてもほとんど研究されていないこの螺鈿について外国人の調査であるがその成果について公表する機会を得、また盛んな質疑応答があったが、こうしたことが今後ベトナム国内での研究につながることを期待したい。また北部・中部・南部の各地において調査を行ったが、特に南部ではこれまで螺鈿が作られていなかったと考えられてきたクメール人に、クメール様式とでも称すべき一定のスタイルを持つ漆時螺鈿が存在する可能性がわかってきたことも大きな成果である。 日本国内では、関西・東京・平戸において、調査および講演を行った。特に、関西では博物館・美術館や個人が所蔵する中国唐代の螺鈿鏡・平脱鏡について多数実見することができ、唐代螺鈿の実態や技術について一定の見通しを得ることができたのは、本課題研究にとって大きな成果となった。
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Research Products
(5 results)