2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジェームズ・ギブソンの視覚論と二十世紀アメリカの視覚文化
Project/Area Number |
21520131
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
榑沼 範久 Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (20313166)
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Keywords | 視覚 / 視覚文化 / 知覚 / 生態学 / 二十世紀 / アメリカ / 哲学 / 進化理論 |
Research Abstract |
研究初年度はジェームズ・ギブソンの視覚論を支える哲学的方法を分析することから研究を始めた。ギブソンの著書や論文のみならず、草稿や書簡を含めて考察の対象にしている。そして、ギブソンの哲学的方法を先鋭化するため、ベルクソンの哲学的方法に補助線を求め、「問題の次元で真偽を見極めること」と「混合物としての経験のなかに質的差異を切り分け、実在の区分を見出すこと」の二つを、ギブソンとベルクソンの哲学的方法に通底する通奏低音として抽出した。この研究成果は、単著論文「問題の真偽と実在の区分-ギブソンとベルクソン」(『思想』no.1028,171-192頁)として発表している。また、ギブソンの視覚論を、その「視覚文化」的意味から測るまえに、知覚システムの生物学的基盤から再考する必要性にぶつかり、ダーウィンの進化理論に考察の幅を広げることにもなった。ギブソンの重視した「生きるための視覚」を、ダーウィンの概念「生きるための闘い」から支えるためである。この問題意識からダーウィンを読み解く成果として、単著論文「ダーウィン、フロイト-剥き出しの性/生、そして差異の問題」(『岩波講座哲学12-性/愛の哲学』岩波書店、91-115頁)を発表した。そして来年度に向け、より濃密に「視覚文化」の諸問題の核心に接近するため、研究初年度は第二回恵比寿映像祭ラウンドテーブル「オルタナティヴ・ヴィジョンズ-映像の生態学」登壇を契機に、「画像の生態学」「建築の生態学」の構築に向けた準備を開始した。発表「ある「密度」を備えた映像・場所の準備」では、コンピュータによる画像・環境の設計に多様性を取りこもうとする現在の潮流や、デザインされた「インヴィテーション・キャラクター」によって行動を誘発・制御・管理しようとする環境管理アーキテクチャに対して、その「生態的根拠」を問いかけつつ、ギブソンの生態学的視座から、21世紀に求められる「視覚文化」の基盤を探索している。
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